AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第10章 沖縄
90 Storys 〜到着〜
「早かったじゃねぇか」

 金髪の宮脇を迎え入れたのは晃汰だった。

「予定より早く撮影が終わってさ、ヘリの担当者さんに連絡したらいつでも大丈夫ですって言うから、来ちゃった」

 差し出された晃汰の右手に荷物を渡しながら、宮脇は靴を脱ぐ。

「旦那はバルコニーにいるよ」

 荷物を受け取った晃汰は、宮脇に竜恩寺のいる方を指差した。

「“それ”より、まあちゃんと仲良くやってんの?」

「いやいや、“それ”はひどいだろ。もう尻に敷いてんのかよ」

 晃汰は苦笑いを浮かべる。

「京介とは会えるけど、晃汰とかまあちゃんには滅多に会えないからね」

 金髪からは想像もつかないほど、宮脇はHKT時代と変わらない眼を晃汰に向けた。

「なんだか嬉しいな、IZ*ONE様にそう言っていただけるのは」

 フンと鼻を鳴らし、晃汰は首筋に手をやった。

 KーPOPアイドルとスタッフの司令塔が久しぶりの抱擁を交わすのを見届け、晃汰は割り当てられた個人用の部屋へと向かった。体の奥が疼いているは分かっていたが、今はひたすらに長期の撮影の疲れを癒したいと彼は考えている。できることなら森保と共に・・・と思ったが、二泊三日と長いから少しぐらいの待ちぼうけもいいだろう。晃汰はそんな事を考えながら、うつ伏せでベッドに飛び込んだ。

 一方の竜恩寺と宮脇は、バルコニーのパラソルの下で肩を寄せ合っていた。

「大丈夫なの?“アッチ”の情勢とか・・・不安なら戻ってきていいんだぞ?」

「大丈夫だよ、いろんな人たちが面白可笑しく報道してるだけ。現地はそうでもないんだから」

 宮脇の言葉はどこか弱々しい。

「戻っても、もうHKTには京介も晃汰もいないもん・・・」

 振り絞った宮脇の言葉に、京介は顔をしかめる。自分の下した決断が形を変え、柔らかい場所に食い込む。だがそれも、京介と宮脇の間で何度も話し合って決めた事。お互いが首を縦に振って決断した事だった。それを分かっているからこそ、宮脇も正直に自分の心境を竜恩寺に漏らすことができている。そんな時は決まって、竜恩寺は何も言わずに宮脇の肩を抱く。

「それだけ?」

 宮脇は不満げな表情を浮かべる。

「上に晃汰もいるし、まどかもいつ来るかわかんないから」

 申し訳なさそうに、竜恩寺はそっと宮脇の唇を奪おうとしたその時、噂をすればなんとやら、第二の来客を報せるベルが鳴り響く。

「ちっとは空気読めってんだよ」

 舌打ちをするもどこか楽しそうに、宮脇の目に竜恩寺が映る。竜恩寺は立ち上がって玄関へと向かい、森保を迎え入れる。

「たぶん、2階の部屋で寝てるんじゃねかな。名前のプレートがあるから、間違えないと思うぜ」

 晃汰同様、森保の荷物を受け取った竜恩寺は、2階にいるであろう晃汰の方に目線を移す。

「ありがとう、向かってみるね」

 鼻の通った長崎っ子は、彼氏の相棒に礼を言って階段を上っていく。2階に森保が消えていくのを見届け、京介はキャリーケースを持ってリビングへと向かった。

 頬を叩かれるちょっとした衝撃で、晃汰は重い瞼を開けた。寝返りを打って仰向けになっていた為、顔を天井を見上げていた。そのまま目線だけを右のほうにやると、自分を覗き込む女神の顔があった。

「ごめんね、遅くなっちゃった」

 森保は晃汰の頬を突く。

「ほんとだよ、お陰で待ちぼうけたぜ」

 そう言い、晃汰は森保を抱き込んで自分の隣に寝かせる。

「日中からお盛んなのね」

「そうさせる君が悪い」

 晃汰は静かに森保に唇を重ねた。

Zodiac ( 2019/10/06(日) 12:24 )