AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第10章 沖縄
89 Storys 〜もうひとつの沖縄〜
 大勢の女子の声とともに、無数のグラスがぶつかる。長いようで短かった沖縄ロケが終わり、打ち上げとしてメンバーにバナナマン、スタッフを交えての食事会が行われている。

「おい晃汰!お前あんま無茶すんなよ!」

 既に上機嫌の設楽が、ギタリストの肩を叩く。

「天敵のジャマ下(山下)とホラーマン(梅澤)は遠ざけたので、大丈夫です」

 晃汰は遠くで自分恨めしそうに睨む二人に目をやる。

「なになに、あの二人と仲悪いの!?」

 上機嫌の日村が問う。

「仲は悪くないんです、酒の席になるとアイツらはクソ野郎なので」

 晃汰は吐き捨て、コーラのグラスに手をやる。

 ペースを乱されることがない晃汰は、ごく自然な食べ方で食事を進める。

「つーかさ、お前布袋さんと知り合いなんだろ?今度飲み行く時俺も誘えよな!」

 完全にカイザーとなった設楽が、晃汰を乱暴に叩く。

「あ、冬のライヴに誘われてるんで、声かけときますよ」

「え?」

 涼しい顔の晃汰とは反対に、開いた口が塞がらないバナナマンの二人。その光景は数十秒間も続いた。

 締めの一言は晃汰だった。きちんと笑いも入れつつ、これにて無事に沖縄ロケを打ち上げた。その後、未成年組と成人組とで二次会は別れた。気を使った晃汰とバナナマンはどちらも同じ時間でハシゴし、未成年だろうがなんだろうが乃木坂46の一員であることを言葉に出さずに示した。

 晃汰がホテルの部屋に戻ってきたのは夜明け前だった。二次会で新内と設楽をはじめ、かなりの連中からお酌をして頂いた晃汰は、夜明けまで強がってその連中に付き合っていた。

「そんな強がらなくてもいいのにな」

 ギタリストはそのままベッドにダイヴした。



「あれ?KKコンビいなくない?」

 散々二人を連れ回した首領(ドン)の新内が、大袈裟なサングラスをかけてはバス車内を見渡す。

「そうやな、おらへんな」

 多少寝不足気味の松村が、同じようにキョロキョロする。

「あ、晃汰さんと京介さんなんですけど、今日から夏休みらしいです」

 二人の前の席に座る山下が、振り向く。

「な、な、な・・・」

「夏休みやてぇ!?」

 リアクションがおばさん・・・お年を召しているな新内と松村は、すぐさまスマホを手に取り彼らにメッセージ攻撃を仕掛ける。

「たぶん、今頃彼女さんとお楽しみ中じゃないですかね?」

 山下はトドメの一言を放った。新内と松村はお互いの肩を組んで、謎の結託を結んで大きくため息を吐いた。



 殆どアルハラに近い量を飲まされたギタリストだったが、何故かこの日だけは頭も身体もすっきりとしていた。息の臭さは歯磨きとガムで誤魔化し、晃汰はとびっきりのおしゃれをしてホテルを京介とともにチェックアウトする。

「何時に来んの?アイツら」

 真夏の陽射しに京介は眼を細める。

「午後には着くって、昨日のLINEじゃ言ってたぜ」

 晃汰はスマホを弄る。

 数ヶ月前、沖縄のロケが決まるや否や、晃汰は京介と森保に韓国で活動をする宮脇に声をかけた。

「沖縄で夏しないか?」

 断る者などなかった。各々がスケジュールを調整し、どうにかこの三日間を沖縄に捧げることができた。場所は四人がグループ通話で話し合い、竜恩寺家が所有する離れ小島の別荘に決まった。島へは家の関係者では行けない為、週刊誌も追っては来れない。森保と宮脇は、最寄りの空港から京介がチャーターしたヘリでやってくる。四人はこの二泊三日を目標に、この数ヶ月間を生き抜いてきたのである。

「良い別荘に沢山の酒、それに良い女なんてこの上ない贅沢だよな」

 女性陣より一足先に別荘に到着した晃汰は、大きな窓から見える海を見ながら浸る。

「あとは純白のメルセデスがありゃあ、浜田省吾になれるな」

 晃汰の背中に問いかけながら、京介はボストンバッグを落とす。そんな事を言いながらも、二人の頭の中は最愛の彼女の後ろ姿でいっぱいだった。別荘も酒も、メルセデスも要らない。ただお前さえいれば・・・

 そんな歯の浮くようなセリフを男どもが考えている矢先、来客を報せるチャイムが木造建ての建物内に響いた。先に到着したのは、韓流アイドルだった。

■筆者メッセージ
ひさびさに咲良たんも登場させようかと。
Zodiac ( 2019/10/06(日) 10:07 )