AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第10章 沖縄
93 Storys 〜二人で一つ〜
 二日目の夜、即ち最後の晩餐は晃汰が手料理を振る舞った。なんと下準備はその日の昼から始めるという気合の入りようで、キッチンに何人たりとも近づけぬその雰囲気に、他の三人は始終圧倒されていた。調理の片手間に缶チューハイを挟み、料理をしながら酒を飲む姿は普段のギタリストからは想像がつかぬものだった。

「味付けはどうする?酒飲むから濃い目がいいか?」

 時折、エプロン姿の晃汰がフライパンを片手にリビングへとやってくる。その光景にたじろぐも、三人はきちんと好みを料理長に伝える。返事に気を良くした料理長は上機嫌でキッチンに戻っていうという流れが、午後だけで複数回行われた。

 夕暮れ時、ダイニングではなくリビングのテーブルに真っ白いクロスがかけられ、そこへ次々と晃汰お手製の料理が運ばれる。

「趣味の範疇だから」

 晃汰は謙遜しながらも、食事をテーブルに並べていく。手際の良さと計算し尽くされた配置に、他の三人は黙って見ているしかなかった。

「よし、できましたとさ」

 エプロンをキッチンで脱ぎ、晃汰はホッと一息ついて床に座った。他の連中も違う意味でホッと一息つき、楽しい夕食が始まった。魚や野菜を中心としたメニューで、体重管理が必須なアイドルにとっては最適な献立である。料理長は連中が笑顔で食事をつつくものだから、気分を良くして飲みに飲みまくっている。

 後片付けのことを考慮し、皿や箸などは紙製品を晃汰は使った。その結果、酔い潰れてソファで寝てしまった晃汰抜きでも、後片付けがスムーズに終わった。その後、最後の夜という喪失感もあってか、残りの三人はすぐに順番でシャワーを浴びて寝室へと向かった。だが、森保だけは晃汰を膝の上に寝かせ、彼の頭を撫でていた。

「・・・やべ、寝ちまった」

 程なくして、晃汰は最愛の彼女の太ももの上で目覚めた。

「おはよ。寂しかったよ」

 すかさず森保は晃汰にキスをする。付き合いたての中学生がするような、とても軽いものだ。

「京介たちは?」

「もう寝てると思うよ。それか・・・」

 森保は含みを持たせて、意味ありげな眼を晃汰に向ける。彼女の真意を察するかのように、晃汰は自分の頭の下にたたまれている森保の脚に指を滑らせる。

「そうやって乃木坂の子の脚とか触ってるの?梅澤ちゃんとか、私より背高いから綺麗な脚してるんだろうなぁ」

 窓の外の暗がりを眺めながら、森保は晃汰に問いかける。

「あぁ、たしかに魅力的だわな。まどかの次にな」

 晃汰は起き上がり、森保をソファに押し倒す。晃汰の首に手を回した森保はそのまま力一杯、引き寄せた。

「ここでするの?」

 晃汰はケラケラと笑う。

「今までお預けされてたんだから、もう限界」

 森保は腹筋を使って首と頭だけ起き上がり、晃汰の口内に舌をねじ込む。昨日ぶりとは言え、久しくしていなかったKISSに、晃汰も森保も脳みそが蕩けそうな感覚に陥る。開けられた窓からは波音が心地良く聞こえてくるが、今のリビングには甘美な水音だけがこだましている。

「脱がすよ」

 晃汰はその言葉を合図に、森保のワンピースに手をかける。実家の晃汰の部屋には、本人からサイン入りで貰った森保の写真集がある。だがそこには大事な部分を隠した森保だけが、当然ながら写っている。それが今、その部分さえも隠さずに生まれたままの姿で目の前にいる。どれだけの人間が、この光景を想像して写真集を眺めたか。今の晃汰には絶大な達成感と充実感が相まり、男の部分を刺激しまくる。

「なに?なんか私の身体おかしい?」

 暫くの間凝視されるものだから、森保は思わず不安になる。

「いや、この光景をどれだけの男たちが想像したのかなって思ってさ」

 悪い笑顔を浮かべる晃汰を、森保はなにも身につけていない自身の胸に押し付ける。

「いまは、私のことだけ考えて」

 その一言は、晃汰を野生動物にするには申し分のない言葉だった。





「なんかあっという間だったな」

 ズボンだけを履いた晃汰が、下着だけを身につけた森保に呟く。背中しか森保には見えていないが、それからでも充分に感じ取れるほど、晃汰は悲壮感に満ち溢れていた。

「しょうがないよ、今度は私が会いにいくよ」

 余裕を持っているような返事をするが、森保も同じように淋しさを感じている。その証拠に、ソファから起き上がると、晃汰の背中に自身の身体を押し付けた。背後に体温を感じ、何度も快楽の果てに行っているにも関わらず、晃汰は腹の底が熱くなるのを感じた。

「まどか、まだダメかも」

 晃汰は弱々しく、背中の森保に言う。

「いいよ、私もまだ離せない」

 そう言って、森保は晃汰の耳を舐めた。その後、日付が変わっても二人が二つに分かれることはなかった。それは、二階で寝ているはずの竜恩寺と宮脇も同様である。


■筆者メッセージ
沖縄編、これにて完了です
Zodiac ( 2019/11/02(土) 21:39 )