AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters











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第10章 沖縄
91 Storys 〜炭〜
 網を囲む四人の顔は、炭火の光とアルコールのおかげで紅く染まっていた。近況報告や思い出話で、話題が尽きる事はない。その中でも、KKコンビの移籍が専らである。

「いや、もうAKBはいいかなぁって。戸賀崎さんもいないし、なんか乃木坂の方が楽しくなってきちゃってさ」

 肉を焼きながら、晃汰はチューハイの缶を持つ。

「それさ、結構こっち(韓国)でも話題になってたよ!天才スタッフが反旗を翻したってさ」

 宮脇が、同じく缶を持って興奮気味に話す。

「反旗ってか、まぁ反旗か・・・」

 晃汰は苦笑いを浮かべる。

「京介は、乃木坂でも裏方なの?」

 他と違い、缶ビールをグラスに移した森保が、野菜を串に刺している竜恩寺に問う。

「うん、AKBの時と変わらずに、裏方さんだね。結構そっちの方が好きだし、表に出るのはメンバーだけで充分だしね」

 心を許した人にだけ見せる眼をした竜恩寺は、親友の彼女に答える。

 1回目の沖縄の夜は、別荘の庭で四人がBBQグリルを囲んだ。その気になれば一流シェフを呼ぶ事など、四人にとったら容易い事だ。しかし、彼らはそれをしなかった。久しぶりの同級生での会食は、若者っぽく炭火を囲む事となった。

「ここ最近は曲作りもせずに、ただ誰かに付いてお世話係かな。結構3期生たちとも仲良くなってきたし」

 早くもカシスオレンジに切り替えた晃汰は、アウトドアチェアにもたれかかりながら話す。それを同じようにアルコールを片手に、三人が温かい眼で見守る。同級生にして恋人、戦友の四人には多くを語らずとも、通じ合える何かが既に構築されている。尚も気を良くし、晃汰を含むアイドル達は飲み続けた。

 日付が変わる頃、手持ち花火をやった場所とBBQグリルにホースで水をまく。楽しかった時間が過ぎていくように、炭も煙をあげて真っ黒くなっていく。その様子を眺めながら、晃汰は晴れない顔でさらに水をまく。背後では相方の竜恩寺がテーブルや食器などを片付けており、女子達はシャワーを浴びに行っている。

「なんか、あっという間だな」

 竜恩寺が、晃汰と同じ気持ちを代弁する。

「仕事してる時は、凄い待ち遠しかったのにな」

 晃汰も自然とため息が混じる。まったく、と竜恩寺が顔をしかめる。

 程なくして、男手二つで宴の後処理が終了した。ハウスに二人が上がったときには、髪を湿らせたアイドル達が、大きなTVの置かれたリビングでくつろいでいた。

「人の気も知らないで・・・」

 炭で汚れた顔を携えた晃汰が、正反対な美白の二人に嫌味を言う。

「原始人みたい。早くシャワー浴びてきなよ」

 男二人の顔を見た女性陣は、ケラケラと笑った。

「後で覚えてろよ。ベッドの上じゃ容赦しねえからな」

 予め用意していた着替えを持った晃汰は、意味ありげな眼を森保に向けてバスルームへと向かった。

Zodiac ( 2019/10/27(日) 22:01 )