AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters - 第1章 Select future
3 Storys 〜讃え合える仲〜
 晃汰が2本のギターとエフェクターたちを車のトランクに押し込み、エンジンをかけた時に、晃汰の携帯が振動した。 LINEの通知だろうと何秒かは無視した晃汰だったが、やけに長く振動するから手に取る。 画面には晃汰の最愛の人の名前が写真付きで表示されていた。 急いで通話ボタンをスライドした晃汰は、落ち着いてスマホを耳に当てた。

  「今仕事終わったんだけど、今どこにいる?」

こっちの状況はお構いなしかよ と、晃汰は苦笑いをしながら森保に答えた。 どうやら森保のいる場所まで少し遠いらしいので、晃汰は森保に適当に時間を潰しておくように言って通話を終わらせた。 握っていた携帯をサイドボードに置いた晃汰は、アクセルペダルを静かに踏んだ。

 一方、晃汰の到着を今かと待ち構える森保は、ひとりで洒落たカフェでミルクティーを啜っている。 一口啜る度に腕時計を確認してはため息を吐き出し、窓の外に眼をやる。 すっかり日が暮れた東京の夜は、森保には少しだけ寂しく思えた。 そんな夜だから、晃汰と一緒にいたいと思って彼を呼び出したのだ。 仲の良いメンバー達とご飯でもと思ったが、森保にはその選択肢はなかった。 

  「やべえな・・・ 渋滞にはまってすっかり遅くなっちまったぜ」

 思いがけない交通渋滞に遭遇してしまった晃汰は、焦りながら森保との待ち合わせ場所に急いだ。 だが、そこには森保の姿はなかった。 車を降りて辺りを見渡しても、どこにも長身美女の姿は確認できない。 

  「怒ってどこか行っちまったのか・・・?」

息を切らしながら膝に手をついた晃汰は、ふと一軒の小さなカフェを捉えた。 その窓際の席に、突っ伏して寝ている少女の姿に見覚えがあった。 自分のカンに自信がある晃汰は、迷わずそのカフェの扉を開けた。 そして綺麗な寝顔の少女の頬を、晃汰は人差し指で突いた。 その可愛い反応に晃汰は萌え死にしそうだったが、今度は肩を揺すって起こした。

  「あれ・・・ いつの間に寝てたんだろ・・・」

寝起きの森保は自分が寝付いてしまっていた記憶がないらしく、少しの間は放心状態だった。 その様子を見た晃汰は、森保と同じミルクティーを注文して隣に座った。 やがて、運ばれてきたカップを受け取って一口啜った。 その頃には森保も平常心に戻り、冷めたミルクティーに手を伸ばした。

  「で、今日はどんなご用件?」

 目の前の景色をみながら、晃汰は森保に訊いた。 森保は一気にミルクティーを飲み干し、一呼吸おいてから口を開いた。

  「なんとなく会いたくなったからさ・・・ なんとなく・・・(笑)」

ガラスに映る森保の照れ笑いを見た晃汰は、フッと鼻で笑って再びカップに手を伸ばす。 

  「あ、そうだ! 私のグラビアの雑誌、見てくれた?」

いきなり森保は思い立ったかのように、晃汰の肩を叩きながら晃汰に向いて言った。 危うくミルクティーをこぼしそうになってしまった晃汰は、やっとのことでカップを置いて答える。
 
  「見てないよ」

  「何でよ!?」

晃汰の素っ気ない返事に、いつもの森保からはイメージできないぐらいの声が出た。 そんな森保をお構いなしに、晃汰は落ち着いた声で答えた。

  「だって、いつでも見れるじゃん・・・」

数秒遅れて顔を真っ赤にした森保は、恥ずかしさのあまり下を向いてしまった。 その様子を横目で見ながら、晃汰はミルクティーを飲みほしてカップを置いた。 ようやく落ち着いた森保の分までお金を払い、腕を絡ませて店を出た。 

 森保を助手席に乗せ、晃汰はキーを回してエンジンを始動する。 スピードメーターが全開に振りきれ、晃汰お気に入りのアルバムが流れた。 その曲になんとなく聞き覚えがあった森保は、虚ろに覚えている歌詞を口ずさんだ。 その声を聴いたとき、晃汰はアクセルを踏み込んだ。

■筆者メッセージ
慣れない三人称ですが、感想待ってます!!
Zodiac ( 2014/07/21(月) 10:35 )