AKBの執事兼スタッフ 2 Chapters - 第1章 Select future
2 Storys 〜ギタリストの強み?〜
  「Dのキーで作っていこうと思うんですけど、なんか良いギターソロないですか?」

 自前の布袋モデルを抱えながら、スタジオの傍らで休憩している山本に晃汰は歩み寄った。 持っていた紙コップの中身を飲み干した山本は、晃汰のもう1本の黒いテレキャスターを借り、アンプ直のセッティングでスケールを弾きはじめた。 その一部始終を窓越しに見ていた柏木とたかみなは、我慢しきれなくなってスタジオに入ってきた。 どちらともギターの経験がAKBに入ってからあり、3人の楽しげな作業に混ざりたくなったのだ。

  「あまりエフェクティヴにするつもりはないんで、真っ直ぐで芯のあるサウンドでソロは作ろうと思ってます」

京介の刻むドラムビートに合わせて、晃汰は得意なフレーズを次々に弾く。 晃汰の手元から繰り出される見事なサウンドに高橋と柏木は酔いしれている。 やがて晃汰が挑発的な眼を山本に向けた時、山本はアンプの切り替えスイッチを押してドライヴサウンドを設定した。 そして、晃汰と同じキーでギターバトルを繰り広げる。 MAD CATZ 時代のプレイを動画で確認済みの晃汰は、山本がどんなフレーズを使ってくるかは予想ができている。 その通りになった時の返し方は、晃汰の頭の中に山ほど入っている。

  「もう無理だ! 晃汰には敵わない!!」

 山本が自分の手癖フレーズを出し切って根を上げたところで、2人のギターバトルは終了した。 晃汰は余裕の表情を覗かせながらギターをスタンドに立てかけて椅子に腰かけた。 悔しそうに苦笑いを浮かべる山本は、演奏前に用意しておいたドリンクを一気に飲み干す。 高橋と柏木が2人を労いながら近づき、晃汰は座りながらギターを太腿の上に置いた。 さっきまで握っていたピックを再度握り、先程の復習でもするかのように手癖を弾き始めた。 その左手の動きを見よう見まねで、山本は食い入るように眺めている。 

  「なんか気に入ったフレーズあったら言ってください。 ギターソロに使うつもりなんで・・・」

晃汰は3人の方に顔を向けながらそう言っているが、どうしてそんな難しいフレーズを手元を見ないで弾けるのかが3人には理解できなかった。 

 こうして楽曲の大方なメロディを作った5人だったが、全員が揃わないところで歌詞を書く訳にはいかないという結論に達した。 そこで、今日のところは退散することに決めた。 3人のメンバーはこの後にまだ仕事があり、ちょうどよかったと執事の2人は安心した。

Zodiac ( 2014/07/16(水) 21:40 )