AKBの執事兼スタッフ


















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第8章 初映画 初演技
43 storys 〜中学・執事学校の先輩〜
 過激なカーチェイスをスタント無しで撮影し、満身創痍でパイプ椅子に身体を委ねている。 スタイリストさんが髪型を整えてくれているが、意識は着々と建てあがる敵のアジトにあった。 
  「よう、丸山」
 そんな時、僕が中学と執事学校でお世話にんあた先輩がロケ現場に足を運んできてくれた。
  「あ、大橋さん!」
さっきまでの疲労が嘘だったかのように体が軽くなり、目の前の先輩と握手を交わした。

 大橋朋樹 野球部の先輩であり、執事学校の先輩でもある人だ。 夏休みと冬休みの間に執事学校に通っていた僕らは、部活よりも接点があった。 僕が部活を辞退してから交流は減ったが、まさか撮影現場に駆けつけてくれるとは思わなかった。 ちなみに、彼の家も相当なお金持ちです。

  「お前がAKBのスタッフで働いてるって聞いたから、来てみたんだよ。お前の携帯に電話しても出なかったから、竜恩寺に電話してここまで来たんだよ」
  「あ、バッテリー切れたまんまでした」
  「ったく、充電ぐらいしとけよ(笑)」
そう言って大橋さんは、背後に置いてあった段ボールが山積みになった台車を転がしてきた。
  「俺の行きつけの洋菓子屋のシュークリームだ。 竜恩寺に全員の人数聞いたから、多少余るように買ってきたぜ。 後で配ってくれな」
  「ありがとうございます〜」
その時、撮影開始を告げる声が聞こえたので、僕は立ち上がった。 空気をよんだ大橋さんは、ねぎらいの言葉を言って帰ってしまった。 もう少し話をしていたかったが、彼もこちらも忙しいのだ。
 夜のグラウンドでのシーンで、今日の撮影は完了した。 ナイター照明と乾いた土が、僕と京介を野球バカに戻してしまった。 少しの間、キャッチボールを久しぶりに楽しんだ。 衰えた筋力に絶望しつつも、また野球がしたいと思った。

Zodiac ( 2013/10/01(火) 21:18 )