AKBの執事兼スタッフ


















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第8章 初映画 初演技
42 storys 〜過酷な日々〜
 半分寝た状態の脳で、歌詞を書き上げたのは朝方だった。 根を張り出すとここまでになってしまう性格で、命の危機の直前にまでなってしまったこともある。 何度も思いついたフレーズを書いては消し、書いては消しの繰り返し。 シャーペンの芯は減り、消しゴムのカスが増えた。 ipadで書けばこんなことは起きないのだが、昔から歌詞は紙とシャーペンで書いている。 このやり方が、1番自分の世界観を表せることができると自負しているからだ。
 その旨を知らせるべく、朝4時にまどかにLINEでメッセージを送った。驚くことに、送信ボタンをタップした瞬間に既読の文字がついたのだ。 あまりにも奇跡的すぎて怖くなってしまうほどだ。
 その数時間後、現場で顔を合わすなりまどかは、
  「早く歌詞見せてよ」
と、催促をしてきた。 バッグから取り出した、歌詞の書いてあるレポート用紙を手渡した。 
  「晃汰がこんな恋の歌詞書くなんて意外・・・」
紙面から眼を上げずに言ったまどかは、さらに眼を通していく。 一通り読み終わったらしく、紙を僕に返してきた。
  「あのサウンドと合ってると思うよ。 恋の歌詞なのに、凄いかっこいいよ!」
興奮気味のまどかから、歌詞を奪い返しながら答えた。
  「フレッシュなHKTのイメージを逸脱することなく、少しROCKなエッセンスを入れたかったからな。 これで秋元さんも喜ぶだろうよ」
共同作業をしてきたまどかに歌詞を褒められたことで、機嫌が格段に良くなった僕。 撮影を視察しに来ていた秋元さんに、歌詞を見せた。 まどか並みの評価をもらい、益々機嫌がよくなった。 
 今日も朝から相変わらず、撮影だ。 もう既に折り返し地点を過ぎていて、段々とクランク・アップに近づいている。 だが、まだまだ本領を発揮する場面はたくさんある。
  「今日はまどかが捕まっている建物に、KKコンビと咲良が乗り込むシーンだ。 建物の中で敵と殴り合って、銃を持った敵が出てきたところで初めてこのシーンでは銃を使うんだ」
身振り手振りで教えてくれる監督を真似ながら、一緒に体勢を作っていく。 スタントマンに頼らず、全部のシーンを僕達本人が演じ切る。 その裏には、幾度の稽古が積まれているのだ。
 監督の合図で始まり、相手にぶつからないギリギリのところで拳を振りぬく。 これは一方的ではなく、僕も受け身にまわる場面もある。 よけたりよけられたり、殴ったり殴られた李の繰り返しだ。 
  「カット!! OKだ!!」
 監督の声が建物中に響き渡り、演者たちはその場に力尽きたように座り込む。 京介と僕は体力に自信はあるものの、咲良の疲労は目に見えていた。
  「ほら、飲めよ・・・」
スタッフから僕にと手渡されたドリンクを、咲良に手渡す。 まだ息切れが収まらない咲良は、やっとの思いでコップを持つと一気に飲み干してしまった。
  「なんでそんなに平気なの!?」
大きな深呼吸を1つして、僕と京介に向きながら咲良は訊いてきた。
  「そりゃ、普段から鍛えてるからな。 このぐらいじゃヘバらないよ」
京介が僕の意見を代弁してくれたので、僕は頷いているだけだった。
  「じゃあ、私も一緒にトレーニングしようかな?」
思わずドリンクを吹き出した京介は、苦しそうに咳込んだ。 その背中を叩きながら、僕は咲良に真意を訊いた。
  「マジで言ってんの!? 相当キツイよ・・・」
すると咲良は、眼を見開いて完全拒否した。
  「やんないやんない・・・ 2人がキツイって言うんだから、やめとくよ」
全力で断るさくらを、京介と後から合流したまどかと笑った。

Zodiac ( 2013/10/01(火) 21:17 )