AKBの執事兼スタッフ


















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第8章 初映画 初演技
40 storys 〜まどらー〜
  「これが完成品で、声は別に入れるって秋元さんに言っておいてくれ」
 布袋さんは完成した楽曲を渡しながら、こう告げた。
  「はい。 今日は、すごい楽しかったです」
僕は受け取りながら、返した。
  「声入れの時にもう1回会えるよ。 今度、僕のライブにも遊びに来てよ」
  「是非!」
最後に握手を交わして、スタジオを後にした。 

  「あ〜、楽しかった」
 現場へと向かう僕の車の中。 助手席にはまどかが乗っている。
  「現場には、どれくらいに着く?」
スマホで時刻を確認しながら、まどかが訊いてきた。 
  「この調子なら、昼ぐらいには着くよ。 午後の撮影まで、大分時間があるな」
  「お昼は早すぎるね。 どっかでご飯食べてく?」
  「そうするか? さすがに、ロケ弁にも飽きてきたしな」
赤信号で止まると、まどかにリクエストをきいた。
  「博多の方じゃ食べれないものがいいな」
なんという無茶ブリ! てか、東京のものなんて大体全国で食べられるだろ。
  「いや、無理だから。 せめて具体的に何が食べたいか言ってほしいぜ」
  「ん〜と・・・」
ここで信号が変わったので、静かにアクセルを踏んで発進した。 ブツブツと料理名を呟くまどかの声が、徐々にエンジン音でかき消されていく。
  「あ、焼き肉が食べたい。 最近食べてないんだ〜」
  「焼き肉か・・・ 適当に探してみるか」
今は大通りを走っているので、たぶんチェーン店を見つけることができるだろう。 そうこうしているうちに、早速みつけた。
  「あ、あの店でいい?」
  「いいよ〜。 博多じゃ、こんなお店みないな」
  「え? 博多にはないの?」
  「ないよぉ。 一応大都市なのにね」
まどかお馴染みのおっとりとした笑顔が出たとき、僕はバックで駐車を終えた。 一応2人とも変装はしているが、ばれることはまずないだろう。

  「よく食べるね・・・」
 豪快に肉を頬張るまどかをみて、思わず言葉が出てしまった。 僕が頼んだ肉の量より、彼女が頼んだ量が多いのだ。
  「え、普通じゃない? みんなこれぐらい平気で食べちゃうよ」
と言いつつ、箸のスピードは衰えをしらない。 その細い身体のどこに、そんな大量の肉が入るのか不思議でたまらなかった。

  「ごちそう様。 また晃汰に奢ってもらったね」
口直し用の飴を舐めながら、助手席のまどかが話してくる。
  「だから、これが当たり前なんだっての。 デートで男が払うなんてことは」
  「前も同じこと言ってたね」
  「そうだっけ?(笑)」
  「そうだよ。 晃汰と初めて会った日のことも覚えてるよ」
  「もうやめてくれ(汗)」
照れ隠しに、話をさえぎってアクセルをさらに踏み込んだ。

Zodiac ( 2013/08/27(火) 17:39 )