AKBの執事兼スタッフ


















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第8章 初映画 初演技
39 storys 〜レコーディング〜
 布袋さんとまどかが、音楽室で初めて会った日の翌日。 僕とまどかは僕の運転で、都内のスタジオに向かっていた。 午後からは撮影が分刻みで予定されているので、午前中に曲を仕上げなくてはならない。 ただ、仕上げるといってもまだ映画公開は随分先なので、よりクオリティを高めていきたいと考えている。
  「おはよう。 もうスタンバイはできてるよ」
 入り口で待っていた布袋さんが、笑顔で迎えてくれた。 案内されてブースに入り、自前の市販のテレキャスのシールドを簡単なシステムに繋いだ。
実際、曲自体は完成していて、昨日のうちに布袋さんが楽譜におこしてくれている。 あとは、録音して歌をいれるだけである。
  「よし、はじめようか」
 足の上にギターではなくベースをのせた布袋さんが、こっちを向いて言った。 最初はドラムパートで、僕の出番である。 ギターとボーカルが本職だが、実は人並以上にドラムとベース更にはキーボードも演奏できる。 よほど難しい曲ではない限り、演奏することは容易だ。
 僕のドラムを録りおえると、すぐさま布袋さんによるベースパートの録音が始まった。 僕はシンセの前で待機しているまどかに歩み寄った。
  「あの人、なんでもできるんだね」
まどかが、素直に驚きを隠せずにいた。
  「音楽へのこだわりが強いから、他人の曲でもああやって自分の納得する曲を作りたいんだよ」
  「ふ〜ん、そっか・・・
  「もちろん、それは俺もだけどネ」
腕を組んでまどかを見下ろすと、まだ幼さが残る笑顔をむけてきた。 それにドキッとしてしまった僕は、照れ隠しにまどかの頭をクシャっと乱して離れた。 この時のまどかの睨みつけも、最高に可愛かった。
  「さて、本題のギターだけれども・・・」
ベースを弾き終え、上半身を伸ばしながら布袋さんが楽しそうに呟いた。
  「僕はリズムで結構ですよ。 是非とも、布袋さんにはリードギターを弾いてもらいたいんで」
ごますりみたいな口調だったが、それが本心であることは確かだ。 
  「わかったよ。 シンセのテイクとギターテイクは同時録音でいくから、よろしく」
 自前の機材を確認し、いよいよ録音が始まった。 レコーディングでは座って弾くように昔からしている。 その方が指板が見やすいし、運指がスムーズに行えるからだ。 相対している正面の布袋さんも、同じスタイルで演奏している。 膝でリズムを刻みながら、なめらかに指を動かしている。 布袋さんの右側には、まどかの横側が見える。 こちらも布袋氏に劣らないほど、なめらかな指さばきをみせている。 ブランクが致命傷のピアニストにとって、この技術を維持しているのはすごいと感服した。

Zodiac ( 2013/08/27(火) 17:38 )