AKBの執事兼スタッフ - 第8章 初映画 初演技
38 storys 〜ギタリストとアイドル〜
 昼ご飯を皆で食べ終えてまどかと2人で音楽室で作業をしている時、ブリティッシュ・ファッションに身を包んだ長身のギタリストがやってきた。 
  「初めまして。 ギタリストの布袋寅泰といいます」
初対面のまどかに対して、布袋さんは挨拶をした。 そのデカさにビビったまどかは、たどたどしく挨拶を返した。 それを見ていた僕は、吹き出しそうになってしまっていた。
  「出来たところまで、聴かせてくれない?」
学習用の椅子に座った布袋さんは、腕を組んだ。 笑顔で頷いた僕は、ipadの画面を叩いた。
 午前中に粗方作った曲を、目を瞑りながら聴いていた布袋さん。 曲が終わり、静かに口を開いた。
  「これ、本当に君たち2人で作ったのかい?」
満足気に首を振りながら、布袋さんは椅子に座りなおした。
  「誰の手も借りずに、僕たちだけで作りましたよ」
ドヤ顔をしながらまどかと目を合わせ、足を組んだ。
薄く口元を緩めた布袋さんは立ち上がって、僕の市販のテレキャスターを手に取った。 
  「もう1回、流してくれない?」
ミュージシャンの眼をした布袋さんが、足の上にギターをのせながら言ってきた。
まだギターパートがのっていないこの曲に、布袋さんがギターサウンドをのせる。 時間が経つのを忘れ、ただ聴き入ってしまっていた。
 一通り弾いた布袋さんは、自身のipadでなにやら作業をし始めた。 僕は黙って立ち上がると、布袋モデルギターを肩からかけた。 幾つかのエフェクターのスイッチを踏み、布袋サウンドに近いセッティングを呼び出した。
  
 「明日の午前中って、撮影抜け出せる?」
 まどかが演奏するシンセサイザーに合わせて、フリーセッションを楽しんでいた。 そんな時、顔をあげた布袋さんが唐突に訊いてきた。
 「明日は・・・ 俺は大丈夫だけど、まどかは?」
手帳を開いたまどかは、指で予定を追っている。
 「私も・・・ 大丈夫です。 午前中はフリーです」
2人を見渡した布袋さんは、おもむろにiphoneで電話をし始めた。
 「さっき送った内容で、明日やるから。 ・・・うん、ゲストが2人来るから。 1人はアイドルで、もう1人は天才だよ」
話の始終を聞いていたまどかと俺は、眼を合わせて苦笑いをしていた。

Zodiac ( 2013/08/22(木) 22:21 )