AKBの執事兼スタッフ - 第8章 初映画 初演技
36 storys 〜初演技〜
 相変わらず撮影が繰り返される毎日。 クランク・アップまでは俳優業に専念しろと、秋元さんから連絡があった。 しかし、僕にはやることがあるのだ。
  「Bメロは、シンセをメロディアスにしてサビに繋げよう」
  「そうだね。 サビが結構リズミカルだからね」
  「いや、俺に言わせるとビート感って言いたいね」
  「どっちでもいいよ」
撮影の合間を縫って、まどかとipadで楽曲制作にとりかかっている。 
  「そこはギターを小さくしたほうがいいんじゃないかな?」
僕の片手のiphoneから、布袋さんの声が流れてくる。 彼の仕事が忙しくないとき、Skypeでこうやって作業をみてもらっている。 とても心強いのだ。 なんたって、片手に世界的ギタリストがいるようのものなのだから。

  「・・・なんとか、ギターソロの前までは完成だな」
  「ギターは、全部晃汰と布袋さんがやってくれるんでしょ?」
  「まぁな。 けど、布袋さんはあくまで修正だけで、基本的には俺が作るんだよ」
布袋さんとのコンタクトは、既にオフラインとなっている。 少しは雑談もしたかったが、あっちもリハーサルの合間だということだった。 
 次は僕の撮影が始まった。 衣装の制服のジャケットを羽織って教室に向かった。 僕が現場の教室に顔を出すのは初めてなので、スタッフに紹介された。 
  「演技は初めてなので緊張してますが、よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げ、拍手が鳴り終わらないうちに頭を上げた。
  「ちょっとクールな転校生 っていう設定だから、目つきとかも気にしてみてくれ」
監督がやさしく声をかけてくれた。 正直、演技の経験すらない僕が戸惑うのもわけがなく、ちょっとしたアドバイスがとても緊張の和らげになった。
  「じゃあ、晃汰が初めてクラスメートの前に現れるシーンから! よ〜い、スタート!!」

 小道具の眼鏡をかけて、撮影はスタートした。 教室の前の廊下を少し歩いてから、教室に入る。 中にはメンバーが制服姿で席についていて、先生役の麻里子様が教卓に手をついて立っている。
  「転校生の丸山君です」
左手で僕を示しながら麻里子先生が言った。
  「丸山晃汰です。 よろしくお願いします」
いつもの僕ではなかなかしないテンションで、台詞を言った。 メンバーの中には、僕の変わりように内心驚いた人もいただろう。
  「じゃあ、丸山君は1番後ろの森保さんの隣に座ってね」
僕と同じく、小道具の眼鏡をかけたまどかが、台本通りに顔を上げた。 今回の映画では、このまどかが重要なキーマンとなっている。 まじすか3ではキーマンがゆりあさんだったように、この映画ではまどかが重要な立場にあるのだ。

 「ハァ〜、緊張した」
 撮影が一区切りつき、勉強用の椅子にもたれた。
 「にしては、堂々と演技してたじゃん」
正面の教卓に寄りかかっている麻里子様が、驚いたように言ってきた。」
 「意外と上手かったしね」
撮影の一部始終をみていた優子さんが、嬉しい評価をしてくれた。
クラスメート役のメンバーは、僕が転入する前の場面を撮るために体育館に行っている。 機材を調整するスタッフ何名かと、僕と麻里子様と優子さんしかこの教室にいない。

Zodiac ( 2013/08/20(火) 19:43 )