AKBの執事兼スタッフ


















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第5章 in さいたまスーパーアリーナ
23 storys 〜スタッフ×アーティスト〜
  「ライブともなると、仕事量が一気に増えるんだよな。 まったく、まいっちまうぜ」
液晶画面と睨めっこを続ける京介が、不満を口にする。
  「仕方ないだろ。 今回は俺たちで指揮を執れって言うんだから」
 いよいよ3日後に迫ったコンサート。 なんと今回はKKコンビが指揮を執れと秋元さん直々に指名された。 どうやら、俺と京介を本気で跡継ぎに考えているらしい。 そんなことよりも、今は目の前のことに集中しなければ。
 粗方PCでの作業が終わったのはこの日の翌日。 当日の2日前から大々的なリハを行う。 西武ドームの様にドタバタさせたくないので、準備は万全の状態にしてある。もちろん、スタッフのバックアップも大事だ。 そして、ライブの舞台はさいたまスーパーアリーナだ。
 
  「はよ〜。 もう音出る?」
ライブ前日。 家から車でスーパーアリーナに来た僕は、先に来ていた京介を捕まえて、サウンドのチェックに向かった。 曲によっては生歌があるので、念入りに調整をする。 また、 GIVE ME FIVE! で僕がギターとして加わるので、その点も考慮してある。 もちろん、音合わせはメンバーと事前にリハを行っている。 
  「丸ちゃ〜ん!」
会場内に僕を呼ぶ声が反響する。 どうやら、ステージから優子さんがマイクを通して呼んだみたいだ。
  「あ、もうリハの時間か」
腕時計を確認すると、リハの予定時間の5分前だった。 今日のリハはバンド演奏や立ち位置を確認するだけのシンプルなリハーサルだ。 明日のために、今日は体力を温存する考えだ。
  「昨日、仕事しながらリハの音源聴いてみたんですよ」
スタンドに置かれている自分のギターを肩に掛けながら、優子さんにサウンドの修正点を話した。 高校時代にバンドを組んでいた優子さんは、すぐに理解してくれた。 1人でもこういった人がいてくれると話が早い。
  「昨日は少しゆきりんのリズムが速くなっちゃったみたいだから、今日はそこだけ注意してやろう」
たかみなさんが率先して、バンド組全体に指示をする。 さすがは総監督だなと、感心させられる。 
  「他に注意するところはある? 晃汰・・・」
低身長にストラトキャスタータイプのギターは、限りなく似合わない。 だが、どこか愛嬌のあるたかみなさんがアドバイスを求めてきた。
  「本番では、世界で自分が1番巧いと思ってプレイしてください。 それが、良い演奏につながるカギですから」
全員が頷くのを確認したたかみなさんは、皆をばらけさせて配置についた。 自前のエフェクターボードの前に立った僕は、一通りのサウンドを確認してゆきりんさんにアイコンタクトをした。 それに頷いたドラマーはカウントを始めた。 
 最後の締めの部分まで終わり、休憩を兼ねてのミニ反省会を行う。
  「僕的には、良かったと思います。 昨日の反省もいかされてましたし、個人の課題もクリアできてましたから」
コップのお茶を飲み干しながら、出来栄えを話した。 みんな、納得のいく演奏ができたらしく、やりきった感全開の顔をしていた。
  「けど、これはリハーサルだからね。 本命は、明日だから頑張ろう」
ここでも、たかみなさんのリーダーシップに感心させられる。 この人を信じてれば、AKBは大丈夫だろうという気さえ起きてきた。

Zodiac ( 2013/08/19(月) 19:20 )