AKBの執事兼スタッフ


















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第4章 そうだ、博多へ行こう
23 storys 〜咲良咲け〜
  「俺が今HKTで推してるのは、・・・誰なんだ?」
  「いや、本人にしかわからないから」
  「そこんとこ、ちゃんと考えてよ」
 まどかの部屋で、話が盛り上がりすぎてしまっている。 こんなに盛り上がったのは、久しぶりだ。
  「俺的に、なつさんの声がドストライクなんだよ」
  「あ〜、わかる。 あの珠理奈さんがゲストで来てくれた時の百貨店は凄かった」
まどかが少し興奮気味に話す。 こいつでも、クールじゃない時があったのか。
  「あれは神ってた。 俺ね、何回も見たよ。 けど、まどかも意外と可愛かった」
  「いや、意外とって何よ?」
  「ん? あんな可愛く出来上がるとは思わなかったからさ」
ここでも、大爆笑が起きた。 さっきから近所迷惑になるくらいの笑いが。この部屋から生まれている。
  「でさ、なつみかんってまどかよりもデカいよな?」
  「そうだよ。 ボスは相当デカいよ」
  「態度もデカいよね」
まさか咲良からこんな言葉が飛び出すとは思わなかった。 おかげで、腹筋が崩壊寸前だ。
  「あれ? そう言えば晃汰って何cmあるんだっけ?」
ベッドに座っているまどかが訊いてきた。
  「175だよ。 もう、これ以上は伸びてほしくないな」
  「そうだよね〜。 あんまりデカいと威圧感あるしね」
  「今でも十分あるよ」
またもや優等生の咲良が、爆笑の種を作った。 

  「さて、そろそろ帰るか。 明日も早いしな」
腕時計を見ると、もう9時を過ぎていた。 帰り支度を始め、ご両親にあいさつをして森保家を辞去した。 夜道で女子が1人で帰るともなると危険なので、咲良の家まで一緒に帰ることにした。 なんか、スタッフとメンバーの域を超えてるって感じか? 
  「また電車か?」
  「うん。 でも、劇場から遠くなっちゃうから、もう劇場帰っていいよ?」
咲良が、自分の事よりも俺のことを考えてくれたことがたまらなく嬉しかった。
  「大丈夫だよ。 それに、お嬢様を守るのが執執事の役目だし」
  「そっか。 じゃあ、よろしくお願いします」 
横に並ぶと身長差が異常なほど目立ってしまう2人だが、心と心にはそれほどの差はないだろう。
  「クラスで告白とかされないのか?」
プラットホームで電車を待っているとき、何気に気になったことを訊いてみた。 これは咲良だけではなく、学生メンバー全員に当てはまることである。
  「されないよ。 だって、私そんなに可愛くないし」
  「自撮りのプロが何を言うんだよ。 まぁ、その素直さがお前の良い所なんだけどな」
すると、咲良は不意に意味不明な質問をしてきた。
  「ねぇ、私だってこと、ばれてないよね?」
  「はい? どうゆうこと?」
  「だから、宮脇咲良だって、周りにばれてないよね?」
  「あぁ。 変装してるし、ばれてねぇだろ」
  「じゃあ・・・」
そう言って、咲良は俺の右手を握ってきた。 小さい手で握ってくる咲良は、どこか大人な雰囲気をもっている。
  「いつもは1人なんだけど、今日は頼り甲斐がある人がいるから」
  「ったく・・・ お前も人懐っこいんだな」
  「人懐っこいのかな? ただ、晃汰のことが好きなだけかも」
  「おいおい。 それは語弊があるんじゃないのか?」
  「わかってるよ。 でも、ビジネスパートナーとしても、プライベートとしても好きだから」
  「もういいよ」
とうとう赤面した僕は、手を繋いだまま顔の前で手を振った。

Zodiac ( 2013/08/19(月) 19:15 )