AKBの執事兼スタッフ


















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第4章 そうだ、博多へ行こう
21 storys 〜博多出張〜
 グアム遠征から1週間が経ったこの日、僕は博多行の飛行機に乗っていた。今回は単独の仕事で、地方グループの偵察に僕と京介が駆り出されている。 僕は博多で、京介は栄。 明後日に難波で合流し、野球観戦をして東京に帰る予定だ。 野球を見るのは久しぶりで、気持ちが高ぶっている。 でも、その前にはお仕事である。 世知辛い世の中だぜ・・・
 空港に降り立つと、iphoneで劇場までの交通手段を調べた。 レンタカーを借りようかと思ったが、たまには公共交通機関にお世話になるのも悪くない。
ウォークマンで布袋寅泰を聴いてバスを待つ。 免許を取得した日にこんな事とはオサラバしていて、とても懐かしく感じられた。
 バスと電車を乗り継ぎ、僕を待ち受けている奴らのシアターに到着した。 ほぼ時間通りであり、お土産もたっぷりと東京で買ってきてある。 しかし、いざ入ろうとしたときに、出入り口から予想だにしない連中が出てきた。
  「あれ? 早かったね」
つい先日のグアム遠征で、仲良くなった2人組が話しかけてきた。
  「いや、俺的には時間通りだ。 今から中に入ろうと思ってたんだけど?」
どうやらまどかと咲良は、どこかに出かけるつもりらしい。 出迎えにしては、余所行きの格好だ。
  「これから咲良と遊びに行こうと思ってたんだけど、一緒に来てもいいよ?」
来てもいいよって、来てほしいんだろ?
  「お土産おいてくるから、ちょっと待ってて」
2人がハニカムのを見届けて、扉を開けた。

  「明太子!!」
楽屋に入った途端、寒い1発芸をかます村重。 こいつの度胸は、並大抵ではない。
  「そろそろ、新しいギャグを考えたらどうだ?」
グアム遠征時に懐いてしまった美桜にお菓子を与えながら提案した。 正直、奴から破壊力があるギャグが生まれる可能性は低いけど。
  「そんじゃ、ちょっと出かけてくるから」
そう言い残して楽屋を出た。 仕掛けておいたお土産のおかげで、追ってくる奴はいなかった。

  「悪い、遅くなった。 で、何処行くんだ?」
  「ここって言っても、わからないでしょ?」
咲良が笑いながらこっちを見てきた。 相変わらず、見下ろす身長差だ。 変装をしているとは言え、あまり目立たないように行動せねばなるまい。
 普段から女子の買い物には慣れているが、今回は知らない場所でのショッピングなので、少し戸惑いも垣間見える。 だが、この2人と話していると緊張が解けていくような気がする。
  「こっちがいい? それとも、こっち?」
両手に服を持った咲良が、試着室の中から訊いてくる。 優等生キャラの称号を持つ彼女も、普段は僕と同じ少女なのだと実感した。
  「晃汰、私は?」
まどかは帽子を被ってみせてくれた。 お嬢様系キャラの彼女のァッションセンスは、確かなものだろう。
  「で、晃汰はどこで寝るの?」
大量の荷物を僕が強引に持たされている帰路で、まどかがとっさに訊いてきた。
  「近くのビジネスホテルに泊まろうと思ってるんだよ」
実は、劇場の空きスペースで寝ようと考えている。 ホテルともなると面倒くさいし、劇場ならだれにも気兼ねなく泊まることができる。
  「じゃあさ、夕ご飯はうちで食べない?」
まどかが気軽そうに誘ってきた。 いや、普通に考えたらアカンでしょ・・・

Zodiac ( 2013/08/18(日) 21:32 )