AKBの執事兼スタッフ - 第3章 初大仕事
19 storys 〜グアム最終日2/3〜
 熱は少しだけ下がったものの、まだ全快とは程遠い身体をなんとか動かしている。 やっとの思いで遅い朝食を食べ終え、ロビーのソファにぐったりとしている。 部屋に戻ろうと思ったが、また花音にお邪魔されてはかなわない。しかたなく、ここでゆったりとしているのだ。
  「あれ〜? 執事君はボッチなのかな?」
声のするほうに顔を向けると、俗に言うアダルトトリオがこっちに歩いてくる。 こじはるさんと麻里子様の間に優子さんがいると、どうしても身長差が著しいな・・・
  「ボーっとしてたんですよ。 それはそうと、何処か行くんですか?」
ソファに座りなおしながら、3人の顔を見渡した。 どうやら、僕に頼みがあって来たらしい。
  「晃汰、これから暇?」
上から覗き込むように尋ねてくる麻里子様は、嫌とは言わせない勢いだ。 だが、決して威圧感のようなものはない。
  「暇ですよ。 相棒に逃げられたんで・・・ で、僕になんの用ですか?」
  「実は、今夜の打ち上げの買い出しに付き合ってもらおうと思って」
優子さんが笑いながら話した。
 買い出しってことは、車を運転しろと? まぁ、安全運転できる体調だし、引き受けますか。
  「いいですよ。 運転すればいいんですよネ?」
3人は同じタイミングで首を縦に振った。 シンクロときめきだな と、心の中で笑ってしまった。
 ホテルのバンを借り、3人を乗せてショッピングセンターに出かけた。 左ハンドルやMT車には慣れているものの、アイドルを乗せての運転には少し緊張している。 助手席の優子さんが、緊張ほぐしとなっている。
  「運転できる男の人ってかっこいいよね」
窓を開けて外の風を感じている優子さんが、こっちを見て言った。 いつもはふざけている優子さんが、今は女優の顔を向けている。
  「よく言われますよ。 小さい時から、車とかは好きだったんですよ」
右手でギアチェンジをしながら答えた。 シフトレバーを見るついでに、優子さんの眼を一瞬だけ見て視線を前方に戻した。
  「何、見つめ合ってたの〜?」
後部座席でこじはるさんとイチャイチャしているはずの麻里子様が、いつの間にか僕と優子さんのやりとりを見ていた。
  「眼が合っただけだよ。 ねぇ、晃汰?」
  「そーですよ。 ねぇ?」
 ショッピングセンターに到着すると、僕はカートを任された。 だが、さすがにカートだけでは足りないと判断した4人は、大人買いをすることにした。店頭に並んでいる商品をカートに入れるのではなく、倉庫に保管してある肉類やジュースなどをまとめ買いする方針だ。 食べ物はそんなには多くはなかったが、主旨が主旨なので飲み物はたくさん買い込んだ。 アルコール類は秋元さんと戸賀崎さんの分しか買っていない。
 トランクに荷物を満載にしてアクセルを踏み込んだ時に、重いと完璧に感じた。 それもそのはずで、段ボールで後ろが見えない状態である。 ルームミラーに映るのは段ボールばかり・・・ 荷物を下すのはホテルの人に手伝ってもらい、なんとか全てを会場となるテラスに運び入れることができた。

Zodiac ( 2013/08/18(日) 21:11 )