18 storys 〜グアム最終日1/3〜
長かった遠征も最終日を迎えた。 今日はスタッフも含めて全員がオフだ。朝から死んだように寝ている執事2人を暗殺するなら、今のうちですよ。
全開の窓から入ってくる太陽の日差しが、テーブルのジュースの缶を照らす。 ジュースといっても、エナジードリンクばかり。 6日目の夜に仲良く体調を崩した2人は、時間も構わずに眠っている。
「・・・頭痛ぇ〜」
目を覚ました僕は、ふと隣のベッドに顔を向けた。 いるはずの京介がいない。 あれだけ弱っていたのに、何処に行ったんだ?
「しゃあねぇな・・・ 起きるか」
重たい体を強引に起き上がらせ、窓を開けた。 海の匂いが少しだけ頭を軽くする。
その時、部屋にベルが響いた。 誰だろうと疑問に思いながらも、ドアを開けた。 目の前には、頭1つ分小さい可愛らしい奴が立っていた。
「弱ってる俺を見に来たのか? 伝染るとマズイから、何処か遊びに行って来いよ」
そんな忠告も無視するのが花音だ。 彼女は僕が横たわっているベッドに腰を落とした。
「京介が連絡くれたんだよ。 晃汰が弱ってるから行ってやりなってさ」
あの野郎、また余計な事しやがって。
「弱ってる晃汰も、なかなかいいじゃん・・・」
そういって、花音は腕を絡めてきた。
「もう、対抗する気力もないよ・・・」
されるがままにされた僕は、事態を悟って目を閉じた。 数秒後、花音の柔らかい唇が頬に触れた。 さすがに、マウストゥマウスは駄目だろうと花音なりに考えたのだろう。
「良くなったら、今度は唇にしてね」
僕がこの世で最も愛すべき花音は、笑顔を振りまきながら部屋を出て行った。 もう少し花音と触れ合っていたら、たぶん風邪も吹っ飛んでいたことだろう。