AKBの執事兼スタッフ - 第3章 初大仕事
14 storys 〜グアム3日目  初通訳〜
 グアム3日目 今日の予定は、メンバーは振りとフォーメーションの確認。衣装合わせ。 スタッフはカメラワークの確認です。
  「当日はヘリで撮ってもらうから・・・」
 カメラマンの石上さんに応用的な事柄を教えてもらいながら、カメラワークの確認をする。 石上さんは、この業界に入って1番最初にお世話になったスタッフさんだ。 年齢は27歳で既婚、子供も1人いる。 お弁当を届けに来た奥さんを、僕は1回だけ見た事がある。 身長は僕より高い183cmで、学生時代は野球部に所属。 外野手だったらしい。
 なんでそんなに詳しいの? って聞かれるかもしれない。 でも、人間観察は僕の趣味でして・・・
  「ここでクローズするから」 
 尚も、石上さんのカメラ講義は続く。 実際、他の人に教わる気なんかさらさら無いし、将来役に立つのでまじめに聞いている。
 TV用に使うカメラは重い。 しかも家庭用のビデオカメラと違って、音を拾う機械が別に存在する。 この世界に入ると決まった日から勉強をしていたが、まさかここまで使いづらいとは夢にも思わなかった。
 だが、学習能力が高い僕達にはお手の物だった。 また、業界用語もなんとなく理解できていたから、説明を受けるのはラクだった。
  「あ、もうこんな時間か」
 ふと、石上さんが言った。 僕らも確認すると、1時を過ぎていた。 どうりでお腹が鳴る訳だ。 
  「じゃあ、今日はもうこれで終わりだよ」
 石上さんは機材を片づけ始める。 僕達も手伝い、30分程度で終了した。
  「ご飯、どうする?」
 ホテルのロビーのソファに僕と京介は腰かけた。 この時間になって食べるのも面倒くさい。 だが、腹は減っている。 複雑な感情だ。 
  「あれ? KKコンビ!?」
 最近呼ばれ始めた<KKコンビ>。 2人のイニシャルを取ってKKになったんだとか。 で、話しかけてきたのは麻里子様だ。
  「どうしたの? なんか顔が疲れてるよ」
 続いて指摘してきたのは優子さんだ。 こじはるさんもいる。 
  「いや、お昼ご飯食べてなくて・・・」
  「え? 私たちこれから行くんだけど」
 3人は向かい側に座った。 周囲の眼が気になってしょうがない。
  「一緒に行かない? 道分かんなくて」
 優子さんが催促するかの様に立ちあがった。 この3人に囲まれたら、断る良い理由が思いつかない。 断る理由がないと言った方が正しいかもしれない。 
 やってきたのは、ホテルからそんなに離れていない洋風な店。 僕が全員の注文をした。 ちょっと鼻が高い。
  「振りの確認は終わったんですか?」
 グラスを傾けながら訊いてみた。
  「うん。 今日はもうなんにもない。 すっごいラクだったよ」
 優子さんが笑いながら答えた。 この無邪気な笑顔は、日常的なものなのだろう。
  「KKコンビは?」
 横から麻里子様が訊いてきた。 
  「カメラマンさんと一緒に確認をしたんです。 まだ機材とかには慣れてなくて」
 京介が苦笑しながら話を聞いているのが、視線の端で見えた。
  「で、あの件はどうなったの?」
 麻里子様はさっきとは声を一段低くして訊いてきた。 あの事とは、寝起きドッキリの件である。 僕が秋元さんに打診し、OKを出してもらった事を3人に伝えた。 
 その後は、楽しく会話をしながら料理を食べた。 二十歳を過ぎた人と話をすると、自分がどれだけ子供なのかを痛感した。 だが同時に、様々な考えを吸収する事も出来た。
 会計は、僕がだしておいた。 英語が分からない3人には、後で徴収するとだけ言っておいた。 が、それを実行する日は来ない事を僕が断言する。

Zodiac ( 2013/08/18(日) 20:46 )