AKBの執事兼スタッフ


















小説トップ
第3章 初大仕事
10 storys 〜寝坊発グアム行き〜
  「頼むよ!! 寝坊しちまったんだよ!!」
 今日から1週間、グアムに遠征です。 先程の叫びは、京介君のものです(笑)
  「・・・今から行くから待ってろ」
 ドライブ用イヤホンを助手席に投げ捨て、ハンドルを右に切ってUターンをした。 道交法ギリギリで突っ走って、なんとか京介の家に到着した。
  「ごめんよ、迎えに来てもらって・・・」
  「さっさと乗れよ!!」
 晃汰の剣幕に圧倒されて、京介は反論する余裕も微塵もない。 言われた通り、荷物を後部座席に放り込んで助手席に座った。 イヤホンを拾い、ダッシュボードにそっと置いた。
  「間に合いそうか!?」
 気まずい空気をなんとかしようと、京介なりの言葉を晃汰にかけた。
  「道交法以内でぶっ飛ばせば、なんとか間に合うネ」
 晃汰の癖、語尾に ネ を付ける癖が出て、京介はホっとした。 
  「何聴く?」
 気を良くした京介は、晃汰のこの問いに、 BOOWY と答えた。 ますます機嫌が、晃汰は良くなった。
 今回の遠征は、新曲PVの撮影とその他諸々を兼ねている。 もちろん、趣旨はPV撮影なので最優先で行われる。 詳しい説明は昨日のスタッフ集会で聞かされている。 どうやら、ポニシュと同じような構成になるらしい。
  「さ、着いたぜ」
 グアムまでの行き方は、本社の駐車場に車を停め、そこからバスで羽田空港に行くのです。
  「はようざいます、秋元さん」
 駐車場で車から2人は、バスに乗る前に秋元に挨拶をした。
  「おはよう。 1週間、頼むぞ。 あっちだと、通訳の仕事が増えるとおもうけどな」
  「任せてください。 もう何度も海外は経験していますから」
 京介が胸を反らして言った。 晃汰は苦笑した。
  「まぁ、指示はあっちでするから、乗ってくれ」
 2人は秋元に促され、バスに乗り込んだ。 が、2人は促されたと言うより、誘導されたのだ。 それは、2人が乗ったバスにはスタッフが彼らしか乗っていないのだ。 首脳陣の考えは、2人に面倒なメンバーへの接待を押しつけるという事なのだ。
  「まじかよ・・・」
 僕は通路の折りたたみ式の座席に座っている。 僕は前の方だが、京介は後ろの方で姿が確認できない。 ・・・喰われたかも。 勝手に京介を頭の中で葬った直後、左隣りから誰かが話しかけてきた。 それは、同い年の高橋朱里だった。
  「丸山くん、でしょ? 同い年だよね?」
  「・・・僕、97年生まれだよ?」
  「私も97年だよ。 同い年だよ」
  「じゃあ、タメ口でいいんじゃない? 名字も面倒臭いから、名前呼びでいいんじゃないかな?」
  「それ、良いと思うよ。 えぇと、晃汰・・・だっけ?」
  「そうだよ。 じゃ、朱里でいいネ?」
  「うん、宜しくね。 でさ、もう1人は?」
  「・・・後ろの方にいるんだけど、見えないからまた後で紹介するよ」
  「うん、分かった。 で、隣りにいるのが玲奈だよ。 同い年だよ」
  「丸山晃汰だよ。 晃汰でいいよ」
 同い年の加藤玲奈は、俺が差し出した右手に笑顔で応じた。 顔のパーツが整った清楚な顔立ちだ。
  「加藤玲奈だよ。 れなでいいよ。 アドレス、貰ってもいい?」
  「あ、良いよ。 じゃ、送るネ・・・」
 スマホを取り出し、端末どうしを近づけて赤外線通信をした。 ついでに、朱里とも通信をした。
  「でも僕、最初朱里のこと、あかり って読んだんだよネ」
  「あ〜、よく間違えられる。 あかりさん って」
 同い年が近くにいると、こんなにも話やすいものなのか!? と、頭の中で葬った京介を本気で忘れながら考察をした。

Zodiac ( 2013/08/17(土) 21:17 )