AKBの執事兼スタッフ


















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第2章 本当は学生
9 storys 〜幼馴染×婚約者×仕事仲間〜
  「良い人達だよネ・・・ あの人達さ」
 メンバーを見送った後、執事どもは晃汰の部屋で雑談をしている。
  「芸能人って、嫌な人が多いって聞くけどな」
 ジュースを飲み干した京介が、少し遠くでギターを弾いている晃汰の意見に賛同する。 花音は風呂に行っている。
  「芸能界に俺たちと同じくらいの歳の奴が入ってんだから、驚きだよ」
 エフェクターを踏み、音を確認しながら晃汰が呟いた。
  「それが彼女だもんな。 そりゃ驚くわ」
 京介が苦笑しながらジュースを注ぐ。 彼の好きなグレープ100%のジュースだ。
  「曲できた? もう来月だぜ、学園祭・・・」
  「今作ってるよ。 メロディもできてきたし・・・」
 来月に行われる我が校の学園祭。 京介と俺と、あと2人を入れたバンドで、2年連続でステージ発表・バンド部門で優勝している。 今回は、3年連続を懸けた大事なステージなのだ。 ちなみに、3年連続優勝を果たしたバンドは、今のところいない。
  「てか、もう寝ろよ。 12時だぞ!? 部屋、案内させっからもう寝てくれ」
  「分かったよ。 じゃ、また明日」
  「あぁ」
 京介がメイドに案内され、部屋を出ていった。 それをキッカケに、俺はギターとエフェクターケースを担いで、隣りの部屋に入った。 ギターとケースを置いて、自分の部屋に戻った。 ちょうど、花音が風呂から上がっていた。布袋寅泰のギター柄が描かれたベッドの上で、髪の毛を乾かしている。
  「京介は!?」
  「もう寝た。 てか、追い出した」
  「へ〜・・・」
 俺は机に向かった。 ノート型PCの電源を入れ、メールを確認する。
  「誰とメールしてんの?」
 花音が首筋に熱い息をかけながら見てきた。
  「秋元さんとか・・・ メンバーとは携帯でしてるからネ」
  「ふ〜ん」
 興味をひくものじゃなかったのか? 花音はまたベッドに乗った。
  「さて、寝るよ?」
 パソコンを閉じて、上着のジッパーを緩めた。 そして、花音の横に座った。
  「・・・どうしたの?」
 花音が上目づかいで訊いてきた。 はだけた寝巻から、胸元が見えている。
  「寝ようよ・・・」
 眠い眼を擦りながら、花音の頭を撫でる。 
  「寝たい っていう意志が伝わらないんですけど?」
 花音は両手を俺の首にまわした。 そして、唇を重ねた。 眼を閉じている花音の顔が可愛い。
 唇を離すと、俺は横たわった。 天井を見上げ、花音に尋ねた。
  「学園祭、来れそうか?」
 シャンデリアの電気を消した花音は、 わからない と残念そうに言った。
 花音が横に寝ると同時にベッドが沈む。 花音に背を向けていた俺は、体を捻って花音に向いた。
  「・・・可愛い」
 花音の顔を胸に当て、頭を撫でた。
  「晃汰の匂いがする・・・」
  「結婚したら、花音の匂いが混ざるよ」
  「違う人の匂いは?」
  「絶対つかない。 宣言する」
 そして、花音の顎に手を置いてクイっと角度をあげた。
  「好きだよ・・・」
 最後は、俺から唇を重ねた。
 祭りの後の空しさは、この時だけは感じられなかった。

Zodiac ( 2013/08/17(土) 21:11 )