AKBの執事兼スタッフ


















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第2章 本当は学生
8 storys 〜初お披露目〜
  「え!? 僕が行かなくたって盛り上がりますって・・・」
  「いや、もう予約しちゃったからさ」
  「家に帰りたい〜」
  「そう言わないで。 奢ってあげるから」
 現在、握手会が終わって解散したところである。 優子さんに集まりに誘われている。 が、行きたくない!!
  「京介、誘えばいいじゃないですか?」
  「もう誘ったよ。 早く行こうよ」
  「それだったら、僕の家来ませんか? いえ、変な話じゃなくて・・・」
 苦し紛れで放った一言は、意外とチョイスが正しかった。 優子さんはすぐに賛同の意を表し、招集をかけたメンバーを再度集めた。 その隙に、僕はスマホでじいやに連絡した。
  「じいや? ちょっと今夜、VIPな客が15人弱来るから立食パーティー、準備してくれない?」
  「畏まりました。 北洋館のホールでよろしいですよね?」
  「あぁ、十分だ。 それと、近くの支店からバスを俺の現在地までよろしく」
  「承知しました。 10分程で到着いたします」
  「じゃあ、よろしく」
 僕はスマホをポケットに滑り落として、メンバーに向き直った。
  「みんな、いいってさ。 どんな豪邸か、見たくて・・・」
  「あと10分ぐらいでバスが来ますから、もうちょっと待ってください」
 メンバーを宥めてる僕を、背後からつつく男がいた。
  「おい、記者どもにバレルだろうが!? よく考えろよ・・・」
 京介が血相を変えて訴えてきた。 が、こんな初歩的なミスをする僕ではない。 こうなる事を予想済みな僕は、丸山家敷地内に続く地下トンネルを使おうと考えている。 これは、万が一の時に使えるようにと、先代が作った隠しルートみたいなものだ。 関東圏にある丸山コーポレーション傘下の支店から地地下に下りられる。 マスコミの眼を欺くのには持ってこいの作戦だ。 
 そうこうしてるうちにバスが到着した。 メンバーが乗り込むのを確認して僕も乗り込んだ。 京介がメンバーの餌食になっている。
 ここで、今夜招集がかかったメンバーを紹介しよう。 大嶋優子・高橋みなみ・前田敦子・篠田麻里子・柏木由紀・渡辺麻友・板野友美・小嶋陽菜・松井玲奈・松井珠理奈・木本花音 の11人だ。 何故このメンバーの中に花音が入っているのか不思議に感じた。 
 が、そんな事を考えているうちに我が家の敷地内に入ってしまった。 空中からも撮られないように、屋内でバスから降り、北洋館のホールに向かった。 
  「お帰りなさいませ、お坊っちゃま」
 じいやが出迎える。
  「ただいま。 急に客呼んじゃって悪いネ・・・」
  「いえ、大丈夫です。 もう準備は整っております」
  「じゃあ、案内してやって・・・ 俺、ちょっと着替えてくる」
  「かしこまりました」
 俺はじいやがメンバーを案内するのを見届け、本館にある自分の部屋に走った。 単純に、バスの中でジュースを零してしまったからだ。
 さて、俺が合流した頃は大盛り上がりだった。 メンバーは見た事が無いような料理に大はしゃぎだ。
  「すっごくおいしい!」
 料理を口いっぱいに頬張るメンバーを、俺は笑顔で見ていた。 そんな時、俺を背後から突いてくる奴がいる。 きっと京介だろうと思ったが、角度が違う。 誰かな? って思って振り返ると、俺の婚約者がいた。
  「なんだよ!? ・・・じゃなくて、どうしたんですか?」
 思わずタメ口が出てしまった。 幸い、誰も聞いていない様子だ。
  「今日、泊まってもいい?」
  「ばか! みんないるだろ・・・」
 俺の大声に、メンバーは2人に注目してしまった。 そして、好奇心旺盛な優子さんが、
  「どうしたの? 丸や」
  「いえ、なんでもありません・・・」
 取り繕ったつもりだったが、花音が余計な事を口走った。
  「皆、ちょっときいてください・・・」
  「え? なに?」
 自然とメンバーは2人に寄ってきた。 花音は続けた。
  「実は、私と晃汰は・・・ 婚約者同士なんです」
 どよめきを覚悟していた俺は、メンバーが笑っているのを理解できないでいた。
  「そんなの、とっくに知ってるよ!」
 口元を右手で押さえたしのまりさんが笑いながら肩を叩いてきた。
  「なんで?」
 花音が心底不思議そうな顔でメンバーを見渡している。 俺は、確信犯を予想した。 たぶん、あの眼鏡ヤロウだな と確信した。
  「秋元先生がね、ここにいるメンバーに言ったんだよ。 丸と花音は婚約者だから ってさ」
 たかみなさんが笑いを堪えて教えてくれた。 あの眼鏡には貸しができた。
  「で、キスはしたの?」
 いきなり優子さんがきいてきた。 この問いに花音は しました と、キッパリ言った。 さらに突っ込んだ優子さんが、
  「その先は? その先は?」
 おいおい、アイドルだろ、あんたは!? と、言いたかった。 流石に照れて顔を紅くした花音は俺を見た。
  「してません。 花音がSKEを卒業するまでしませんから・・・」
 俺ははっきりと言った。 変に濁すよりかは、こっちの方が良いだろうと思った。
  「いいなぁ〜、彼氏」
 優子さんが持っていたグラスのジュースを飲むほしながら言った。 これには、あっさんとたかみなさんが おいおい と突っ込んだ。 
  「でもまあ、いいんじゃない? 私たち、誰にも言う気ないし」
 しのまりさんが横目で俺を見ながら言った。 その言葉に、メンバーは首を縦に振っていた。
  「ありがとうございます。 あ、そういえば京介。 お前、ゆきりんさんのファンだったよな!?」
 不意を喰らった京介は、口に含んだ烏龍茶をもう少しでむせそうになった。
  「ば、ばか! なんで言うんだよ!?」
 京介のその言葉は、ゆきりん推しを認めたようなものだった。 当のゆきりんさんは、京介に向かってウィンクをした。 これに堪らず、京介はゆきりんさんと握手をした。 
 ふと腕時計をみると、もう10時を回っていた。 それで、今夜はお開きとなった。 怪しまれないように、我が家のタクシー会社のタクシーで、個人の家に送る事にした。 1人1台に乗ってもらい、地下トンネルで帰って行った。

Zodiac ( 2013/08/17(土) 21:10 )