AKBの執事兼スタッフ - 第17章 選抜総選挙
95 storys 〜緊張〜
 今日と明日、我がAKBグループにとって一大イベントが開催される。 今夜はメンバー自身に ”票” という形で順位がつけられる選抜総選挙開票イベント。 そして明日は、年末の紅白歌合戦で突然の卒業発表をした優子さんの卒業ライブ。 2日間ともここ、味の素スタジオで行われる予定だ。 

  「雨、やまねぇかな・・・」

 傘をさしながらステージの点検を、京介としている。 ビニール傘に打ち付ける大粒の雨を忌々しそうに睨み付けながら、京介はため息を吐いた。

  「てるてる坊主作ったし、後は神頼みだな」

なんとか自分で気持ちを切り替えさせようとポジティブな発言をしているものの、床に跳ね返る雨は虚しくスーツのズボンの裾を濡らす。 かき出しても水溜りはでき、もはや手におえない状況だ。 メンバーが座る椅子や歩く予定の通路の水を抜いてはいるが、振りつける豪雨によってまた同じ状態となる。

  「どうだった・・・?」

 ステージ裏に戻ると、総監督が神妙な面持ちで訊ねてきた。 僕は眼を俯かせて首を横に振るしかなかった。

  「まあ、大丈夫だよね・・・ きっと大丈夫だよ・・・」

作り笑いをした総監督は、僕らにお疲れと言いながらタオルを手渡して去って行った。まるで風呂上がりのような髪型になった僕らは、濡れてしまったスーツを一旦着替えることにした。 更衣室で取りあえずジャージに着替え、張り詰めた空気の待機場へと向かう。  そこはいつもの楽屋とは到底違う雰囲気が漂っていた。 普段の和やかなムードではなくもっと繊細でsenstive、それでいてマグマのように熱い気が感じられる。 それだけメンバーはこのイベントに思い入れがあり、自分の頑張りがsevereに数字に出されてしまうことを素直に受け入れなければならない。 ただ、頑張り方は人それぞれだが狙っているものは全員同じだ。 頂点(センター) メンバー達はこの1つしかないポジションを夢見て日々頑張っている。 

  「彼女に声かけなくていいのか?」

 紙コップに入った温かい珈琲を飲みながら、京介が肩を小突いてきた。 僕は意識しなくても視界のど真ん中で捉えていたまどかに背を向け、京介に呟いた。

  「残念だけど、俺の女はそんなにヤワじゃないんでな」

フッと鼻で笑い、僕はメンバー達とは逆の方向に歩き出す。 実はkのとき、まどかよりも僕の方がもっと緊張していたのだ。

■筆者メッセージ
感動の総選挙、まゆゆセンターおめでとうございます!!
メンバー達の熱いスピーチに涙腺が崩壊し、その勇姿に感動させられ続けました
その熱気を忘れぬうちに、フィクションを書かせてもらいます
Zodiac ( 2014/06/08(日) 19:44 )