AKBの執事兼スタッフ


















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第17章 選抜総選挙
98 storys 〜今夜月の見える丘に〜
  「この涙はどっち? 悔しいのか、嬉しいのか・・・」

 まだ僕の胸に顔を埋めるまどかに、今僕が1番知りたい事を訊いた。

  「半分・・・かな。 もっと上に行きたかったけど、この順位も素直に喜べるし・・・」

ようやく顔をあげたまどかは、涙で眼を真っ赤に腫らしていた。 そう言う僕の眼も同じようなことになっていて、お互いクスッと笑ってしまった。 落ち着いたまどかを立ち上がらせ、車の助手席に乗せる。 今夜はまどかは近くのホテルに泊まる予定だが、少し夜の街にドライブでもと思っている。

  「このまま真っ直ぐホテルに送っていってもいいぞ?」

 静かな夜の道を走りながら、隣のまどかに振り向かずに訊いた。 少し黙ってから、まどかはいつも通りの落ち着いた声で返事をした。

  「25位のお祝いしてくれないの? いじけちゃうなぁ」

一瞬だけチラッとまどかの方を見る。 まどかは窓の外を向いていたけど、その窓に反射するまどかと眼が合った。 可愛い奴めと思いながら、アクセルを軽く吹かす。

 僕が目指していた場所に着いた頃には、まどかは盾を抱いたまま眠っていた。 その寝顔と姿があまりにも綺麗で可愛かったので、少しの間だけ凝視してしまった。 充分見させてもらい、僕はまどかの額にキスをして目覚めさせた。 寝起きで眼が半分ぐらいしか開かないまどかは、あたりを見渡して僕に尋ねてきた。

  「この時間からご飯食べるのも遅いかと思ってさ。 なんなら、2人っきりになれるところが良いじゃんって思ってさ・・・」

 実は、今の今まで土地勘がなく彷徨っていたのだ。 食事をするつもりがなかったことは本当だが、目的の場所と言うのは大きな嘘だ。 迷っているうちに大きな丘の麓にたどり着いたので、そこで夜景でも見ようととっさに考え付いたのである。

  「うぇ・・・ 階段あるんじゃん」

目の前に伸びる階段を見て、まどかは苦笑いを浮かべた。 

  「総選挙で1位になったら、だれよりも階段を上がらなきゃいけないんだぜ? 今のうちに練習しとけよ」

そう言って、僕は階段を駆け上がった。 合宿で蘇った体力のお蔭で、息はほとんど上がらずにてっぺんまで登れた。 そして、下の方にいるまどかを見下ろしながら大きな声で言った。

  「俺の中のセンターになりたいんだったら、さっさと来いよ!」

まどかがどんな顔をしたかは見えなかったが、全力で階段を駆け上がる姿からして容易に想像できる。 1歩、また1歩とまどかが近づき、僕は登りきるのを今かと待ち構えている。 やっと登りきったまどかは、迷わず僕に抱き着いてきた。 僕も強くまどかを抱きしめ、首筋にそっとキスをした。 荒い息遣いと高鳴る心臓がやけにまどかをセクシーに魅せ、月明かりに照らされるその姿は綺麗以上のものだった。

  「総選挙で1位にならなくてもよくなっちゃった」

 ベンチに腰掛け、2人で夜景を見ている時にまどかがふとこう言った。 僕が理由を訊いたが、まどかは一向に応えようとしない。 何回か催促をして、やっとまどかは口を開いた。

  「晃汰の中でセンターに今なれたんだから、別に総選挙でセンターになる意味もないよ。 私が1番見てほしい人に見てもらえるんだから・・・」

上目遣いで真剣に言ってくるまどかに赤面した僕は、思わず手で覆った顔を背けてしまった。 そんな僕の姿に、まどかはここぞとばかりにちょっかいをだしてくる。

  「あんまり挑発するなよ。 俺が壊れる・・・」

尚もちょっかいを出してくるまどかをベンチに押し倒し、半ば強引にキスをする。 唇を離した後は、2人とも笑って夜景に背を向けた。

■筆者メッセージ
総選挙編終了です!! 怒涛の連投もここまで・・・にしないですよ!
Zodiac ( 2014/06/09(月) 22:17 )