94 storys 〜逃走してもすぐ捕獲〜
残すはあと1部だけとなった今日の握手会。 今は最後の休憩時間に入っており、僕と京介は同級生達と話している。 こじまこ こと小嶋真子や岡田奈々、栄からはごりさや花音、難波からは単独で美瑠が来ている。 何と言っても博多が1番多い。 奈央だのまどかだの咲良だの・・・ 商業高校みたいな空気で、僕と京介は肩身が狭い。
「なぁ、俺らいても意味なくね?」
京介が小声で訊いてくる。
「俺も思った。 逃げるか?」
横目で見る京介の横顔が頷いた。 僕らは泥棒の如く、音を一切立てずにグループを離れようとした。
「あ! あの2人逃げてる!!」
センサーの役割をしたのは、恐らく正面に座っていたこじまこだろう。 すぐに追手が走ってくるが、2人の脚力を侮ってくれては困りもんだ。 あの中で1番速いりーぬが追ってきたときはさすがに焦ったけど、なんとか巻けそうだ。 だが、曲がり角を曲がるとボスみかんとわかはるがいた。
「2人とも、晃汰と京介捕まえて!!」
近道をしてきた咲良が2人に捕獲を促し、ボスとわかはるは戦闘モードに入った。
「無理だ、晃汰・・・ 降参しよう・・・」
徐々に走るスピードを緩めながら、京介は戦意喪失した。 僕も諦めて立ち止まり、追ってきたりーぬや行く手を阻んでいたボスとわかはるに連れられて、元いた場所に連行された。
「ほんまに、逃げ足だけは速いな〜」
美瑠が板チョコをかじりながら、集団リンチのように囲まれた僕ら2人を見てくる。
「あのまま逃げ切れるかと思ったけど、なんであそこにボスとわかはるがいるんだよ・・・」
ため息を吐きながら、椅子に座る京介は言った。 隣の僕もそれには苦笑いで頷いた。 腕を組みながら僕らを見下ろす同級生たちは、どこか楽しそうな様子である。
「と言うことで、今日は晃汰と京介も呼んで、皆でご飯に行こう〜」
途中から加わってきた朱里が頷きながら言うと、周りの同級生達も納得したように首を縦に振った。 今夜は皆で仲良くホテル泊まりだから、その考えには賛成だ。 変な事になると思ったので、僕の家に誘うことはしなかった。 だが、京介と割り勘でメンバー達の夕食代は2人で出そうと考えている。