AKBの執事兼スタッフ


















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第15章 合宿
86 storys 〜合宿6日目 再検査〜
 熊に襲われて2日目、新たな怪我が見つかった。 あばら骨が3本折れており、最終日のライブは絶望的となった。 このことをすぐに3人には伝えられなかった。 自分が言いだしっぺだったし、なにより3人の悲しむ顔が容易に想像できて切なかった。 この再検査のことはまだ誰にも漏らしてはいなかった。 秋元さんやまどかにさえも、まだ黙ったままだ。

  「どんだけ強く蹴られたら、骨が3本も折れるんだよ・・・」

 看護師さんに車椅子で病室に送り届けられた僕は、ベッドの上で静かに嘆いた。 秋元さんと戸賀崎さんには、先ほどの検査の内容を電話で伝えた。 その後に、休憩時間を見計らってまどかに電話をした。 

  「あばら折れてたのに、あんなに歩き回ってたの!? 大丈夫なの?」

クールな声で、淡々とまどかは言葉を並べる。 声を聴いただけで怪我が治りそうだが、現実はそうはいかない。 とにかく、ライブには出られないという旨を伝えた。 ライブなんかより僕の事を思ってくれているまどかの言葉を最後に、通話は切れた。 他の2人にも電話をしたが、まどかと同じような内容の言葉を返された。 温かい言葉をかけてくれるが、心底3人がガッカリしていると思うと胸が痛んだ。 

 気を落として窓の外を眺めた時、戸賀崎さんから電話がかかってきた。

  「今回の事故について、AKBとHKTの公式サイトで公表しようと思うんだが・・・ お前の事を書くべきなのか迷ってるんだ」

僕に遠慮したらしく、元気のない声が聞こえてきた。 秋元さんと相談したらしく、2人の考えとしては僕の事を公に発表するつもりらしい。 48グループでこんな事故が起きたのは初めてだし、ましてや負傷者が出てのも初めてだ。 少し考えた僕は、メンバー全員が無傷であることを強調してくれるならと、承諾した。 正直なところ、こんな大怪我を嘘で隠すことは難しい。 思い切って公表してしまえば、後々楽になると思った。

  「わかった。 レッスン終わりに、またメンバー達が見舞いに行くよ」

 戸賀崎さんとの通話を切り、ベッドにもたれた。 あんな事故があったのにも関わらず、合宿を続行しているメンバーやスタッフ達には労いの言葉をかけたかった。 今回の事故のことは予告通り2つのグループの公式サイトで公表された。 AKBのサイトでは僕の事をメインに書かれていたが、これは仕方のないことだ。 一方で、HKTのサイトではメンバー達の無傷が、詳しく書かれていた。 秋元さんと戸賀崎さんはこの件に関してのコメントを、グーグルプラスに投稿した。 たちまちコメント数が500に達し、批判的なコメントも少なくはない。 やがてヤフーのトップニュースにもこのことが記載され、僕の名前がまた世間に知れ渡った。 あえてヤフーの記事は開かず、僕はぐぐたすに投稿をした。 内容は、ファンや関係者に迷惑をかけていることへの謝罪、改めてメンバーの無事を伝える言葉、怪我を負った経緯や検査結果、今の身体の状態や心境などを長文で綴った。 

 投稿されたことを確認し、アプリをとじた。 いつもならコメントを拝見させて貰うのだが、今回に関してはそれは一切しなかった。 

■筆者メッセージ
国立の2日目、残念でしたね・・・
Zodiac ( 2014/03/29(土) 21:11 )