AKBの執事兼スタッフ - 第15章 合宿
84 storys 〜合宿5日目 4 しばしの別れ〜
 2人で手を繋ぎながら病室に戻った時、何故か患者ではないのにベッドに寝かしつけられた京介がいた。 そして、京介を取り巻くように咲良と碧唯が座っていた。

  「いや、そいつ患者じゃないから(笑)」

そう言いながら病室に入ると、咲良と碧唯が泣きじゃくりながら抱き着いてきた。 まどかの冷たい視線を背中で感じたが、2人を引き離すことはできなかった。

  「晃汰が死んじゃったと思って・・・」

いつも泣き虫の碧唯が、大粒の涙を僕の患者用の浴衣にこすり付ける。 生地を握りしめる咲良は、まだ顔をあげようとしない。

  「泣くなよ。 俺が生きてんだからさ・・・」

2人が泣き止むまで立っているのは辛かったが、泣き顔でスマイルを見れたのは本当によかった。 2人が落ち着いてから話を聞くと、どうやらバッドボーイズのマネさんは3人を置いた後、さっさとホテルに戻ってしまったらしい。 朝一番で東京に帰らなくてはならないらしく、病院のバンで3人をホテルに送り返してくれるように話をつけていたようだ。 

  「京介は寝てるし、俺もまだまだ退院できないしな・・・ とりあえず、あんたらは寝ておけば?」

 余っていたパイプ椅子に腰を落としながら、3人の顔を見渡した。 疲労の色が簡単に分かるぐらい3人は疲れ切っていたから、少しでも仮眠をさせてやりたかった。 僕の病室にはベッドが4つあった。 そのうちの1つは京介が既に横たわっているから無理として、残りの3つを3人が使えばちょうどいい。

  「晃汰が1番寝ないとダメだよ。 私は起きてるからさ・・・」

そう言ってくれたのは咲良だった。 他の2人も私が起きていると聞かなかったが、僕は京介のベッドで京介と寝ることにした。 まどかと同じベッドで寝るという選択肢は頭の中にあったが、さすがに言い出せなかった。

  「お邪魔するぞ」

男が同じベッドで寝るとなると、普通では考えられない展開をイメージするだろう。 だが、まどかや咲良たちと同じベッドで寝るよりかは遥かに良い笑いものになるだろう。 

 その数時間後に、皆一斉に目覚めた。 少し寝坊気味の京介を叩き起こし、ホテルに送り届ける準備をした。 本来なら僕が運転して4人をホテルに送りたかったが、こんな身体じゃまともに運転できない。 運転手さんにこの役は託し、病院で治療に専念することにした。

  「こんなかすり傷、1日で治るよ。 皆に心配しないように、言っておいてよ」

帰り際、まどかとの別れを惜しむ。 泣き出しそうなまどかを抱きしめることはしなかったが、頬で手の甲を滑らせた。 両手で僕の手を握りしめたまどかは、決心したようにバンに乗り込んだ。 その次に咲良と碧唯が続いてバンに乗り込んだ。 乗り込む際に、2人が僕の左腕のギプスに応援の言葉を書いてくれた。 最後に乗り込んだのが京介だ。

  「最後の日までには復帰してくれよ・・・」

こっちの身体の状態をお構いなしに、勝手なことを言ってくる。 だが、これが冗談ではないことを僕らは十分に分かっている。

  「そんな何日もダウンできねぇよ。 明日にも復活してやるよ」

包帯だらけの身体をドンと叩き、アピールした。 安心したような顔を見せた京介は、笑いながら車に乗った。 4人が乗るバンを見えなくなるまで見送った僕は、立っているのがやっとの身体を動かして建物に入った。 待ち受けていた看護士さんが用意していた車椅子に崩れ落ちた。 4人にはこんな弱っている姿は見せられない・・・ 俺の身体は自身が思っていた以上に深刻だった。

Zodiac ( 2014/03/27(木) 20:09 )