AKBの執事兼スタッフ


















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第15章 合宿
83 storys 〜合宿5日目 3 再会〜
  「・・・チッ 病院ってことは、相当やられたらしいな」

  「気が付いたか・・・」

 ホテルから搬送された晃汰は、病院に到着してから3時間で眼を覚ました。 手術自体は簡単なもので、傷口の消毒や縫合といったものだ。 後遺症なども心配はないらしく、動けるようになるにはほんの少しリハビリが必要な程度だ。

  「こんなザマじゃ、執事なんて名乗れねぇな」

  「何言ってんだよ。 お前は立派に執事の務めを果たしたよ」

一睡もせずに晃汰に付き添っていた京介が、笑いながら晃汰の手を握った。 包帯だらけの左手は、すり傷や刺し傷でいっぱいだ。

  「このままじゃ寝れねぇな。 お前と熊との戦いを聴くのも悪くないだろ」

京介はそう言いながら、天然水の入ったペットボトルを持ってきた。 ベッドを起き上がらせた晃汰は、ストローでそれを吸い上げる。


  「・・・でな、スタングレネードを熊の足元に投げたんよ・・・ おい、京介」

 これからが面白いところだと言うのに、京介はベッドの端に突っ伏して寝てしまった。 これまで寝ないで自分の事を捜してくれた戦友に布団をかけ、晃汰は病室を抜け出した。


 ホテルでは晃汰が目覚めたという一方が戸賀崎さんを通じて、メンバーの耳に入った。 一斉に安堵のため息が漏れた。 そんな中、咲良と碧唯、まどかはいち早く病院に駆けつけたがった。 戸賀崎さんや秋元さんも行かせたいのは山々だったが、夜中に大きなバスを動かすのは危険だ。

  「なら、俺たちが乗ってきたバンを使えばええ。 俺が運転するから、病院まで行こう」

大役を買って出たのは、バッドボーイズの2人だ。 情に熱い2人は、良い後輩分の晃汰にいち早く3人を会わせてやりたかった。 もちろん、本人たちも晃汰に会いたいのだが、自分たちよりもメンバーを優先的に考えてくれている。

  「バッドの2人に運転はさせられない。 僕が運転しますから、行きましょう」

そう熱くなる2人を制したのは、2人のマネージャーだった。 マネさんにしたら、バッドの2人が何より大事だ。 もし運転させて事故でもされたら困るので、自分が買って出たのだ。 

  「これで決まりやな。 ほな、頼むで」

メンバー3人とバッドボーイズのマネを乗せたハイエースは、真っ暗な山道に消えて行った。

 
 小銭も何も持っていなかったので、仕方なくペットボトルの水を飲みながら、屋上の手すりに寄りかかっている。 さっきまでの豪雨が嘘みたいに空は星空になっていた。

  「こんな身体じゃ、最終日のライブは無理そうだな・・・」
 
大げさに巻かれた包帯を摩りながら、ボソッと呟いた。 飲み終わったペットボトルを握り潰し、手すりの向こうに投げ捨てる。 カサカサっと森に落ちる音が微かに聞こえ、また静寂に戻った。 もうすぐ夜が明ける頃だが、時間の感覚が失われているから定かではない。 時計を見ようにも腕時計は外されていたし、時間を確認する為だけに病室には帰りたくない。

  「けど、病室に患者がいなくて大騒ぎになるも嫌だしな」

 結局、大人しく病室に戻ることにした。 屋上から夜明けを見たかったのだが、いろいろと面倒なので戻るのだ。 真夜中の人気がない病院は不気味だったが、得体の知れない幽霊なんかより何倍も怖い熊を、俺はぶちのめしたのだ。 

  「晃汰!!!」

病院の中心で愛を叫ぶかの如く名前を叫ばれた俺は、ピタッと歩く足を止めた。 走る足音がどんどん近くなり、終いには背中から抱き着かれた。 俺の背中を何度も確認するかのように、顔を埋めてくる。 

  「来たのかよ・・・ 俺はこの通り生きてるぞ」

  「バカ・・・ 死んじゃったかと思ったよ」

たぶん、1番心配させたのはまどかだろう。 もちろん京介やメンバー達、秋元さんや戸賀崎さんにも迷惑はかけた。 だが、このまどかだけは特別な念を持っていたに違いない。

  「悪かったな、心配かけて・・・」

まどかの方に向き直った僕は、呟きながらまどかの前髪をどけた。 眼を赤くしたまどかの端正な顔が露わになった時、静かに唇をを重ねた。

■筆者メッセージ
まどらーの皆さん、すいません!!
Zodiac ( 2014/03/25(火) 19:52 )