AKBの執事兼スタッフ - 第15章 合宿
82 storys 〜合宿5日目 2 決着〜
  「スタングレネードと思われる閃光を、2時の方向に確認!!」

 渋々まどかを捜索に同行させた京介一隊は、晃汰が使ったスタングレネードの光を森の片隅に確認した。 

  「晃汰が使ったんだ! 奴はまだ生きてるぞ!! そのポイントまで急ぐんだ」

京介の隣で座っていたまどかは、とりあえず晃汰が生きていることにホッとした。 

  「広いところに着陸するから、降りる準備をしろ」

京介は立ち上って、特殊服に着替える。 ヘルメットを被り、アサルトライフルを肩からかけた。


  「死ねぇ!!」

 自分よりも明らかに背がデカい熊のこめかみ目がけ、ナイフを突く。 片足で飛び上がり、両手でこめかみにナイフを突き刺した。 地響きのような唸り声をあげ、熊は痛みに悶えている。 とどめに麻酔団を撃ち込もうとSOCOMを構えた。 だが、向きを変えてこちらに突進してきた瀕死の熊は、銃を叩き落として俺に最後の一撃をくらわせた。右脇に重傷を負った俺は、瀕死の熊と同時に音をたててぶっ倒れた。


  「晃汰はこの近くに必ずいる! 探せ!!」

 ヘリを着陸させ、隊員たちを率いて京介が晃汰の捜索にあたる。 暗視ゴーグルをかけているから暗闇でも問題はなかった。 

  「死ねぇ!!」

その時、晃汰の声が聞こえた。 その声は明らかに晃汰のものだと、京介とまどかは確信した。 隊員を再集結させる前に、京介とまどかは走り出した。 声のする方に走ると、そこには顔にナイフが刺さった熊に、血だらけの晃汰がいた。 京介が瀕死状態の熊にトドメをさそうと銃を構えた。 すると、それを察したかのように熊は機敏に動きだし、晃汰の右脇を切り裂いたのだ。 銃で追える速さではなかったので、京介の撃った銃弾は空しく奥の木の幹に当たった。 晃汰が倒れる瞬間を見てしまったまどかは、パニック状態になってしまった。 京介よりも先に晃汰に近づき、抱き着いた。 万が一の為に熊にヘッドショットをした京介は、アサルトライフルを捨てて滉太に近づいた。 脈を確認すると、すぐさま大声で隊員を呼んだ。 駆けつけた隊員たちによって担架にのせられ、晃汰はヘリに運ばれた。 

 
 近くの病院でも遠すぎるということで、一旦ホテルで応急処置をすることになった。ロビーで応急処置が始まった。 傷は相変わらず深いので止血ぐらいしかできることがなかったが、肺などの臓器はやられていなかった。 あまりの痛みに、晃汰の気が付いた。

  「ここは・・・」

  「ホテルのロビーだ。 ここで応急処置をして、病院に搬送する」

ずっと寄り添っていた京介が答える。 
  
  「咲良と碧唯は・・・?」

  「2人とも無事に救助した。 お前のGPSを持たせてなかったら、見つけられなかった」

  「そっか・・・」

晃汰は静かに眼を閉じた。 死んだわけではなく、気を失っただけだ。

  「これで処置完了です。 直ちに最寄りの病院に運びます」

  「頼む」

包帯だらけの晃汰に、京介がずっと寄り添いながら病院に搬送された。 ホールにいたメンバーやスタッフ、戸賀崎さん達は、晃汰の救出については何も知らされていない。その内容を伝えるのは、まどかに託された。 まどか自身が自分からこの役目を買って出たのだ。 まどかとしては、晃汰の事を客観的に見て落ち着こうとしているのだろう。

  「戸賀崎さん、お話ししたいことが・・・」

 彼女は、晃汰の救出についてすべてを話した。 晃汰が熊と戦っていたことや、重症だということも。 そして、晃汰との関係についても話した。 もちろん、あの告白した場面で晃汰が告白の変事を返していないことも。

  「肉体的な関係を持っていない以上、こちらとしては上辺だけの友情として扱うことしかできない。 それに、返事は返されていないんだろ?  それなら、こちらとしては片思いと受け止めざる得ないだろう」

戸賀崎さんは笑顔でそう答えると、涙ぐむまどかの頭を撫でた。

  「よかったな、大切な人が生きてて」

崩れ落ちたまどかは泣きじゃくった。 その始終を聞いていたメンバーも涙を流し、秋元さんでさえも目元を押さえていた。

■筆者メッセージ
サバイバル編、完結です!!
Zodiac ( 2014/03/24(月) 21:10 )