AKBの執事兼スタッフ


















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第15章 合宿
78 storys 〜合宿4日目 4 逃走〜
 日が暮れ始め、急造の企画を京介がメンバーに発表した。 

  「ロケ開始まであと2時間弱あります。 それまで自由時間なんですが、軽くご飯を食べておいた方がいいでしょう。 くれぐれも食べ過ぎには注意してください、特に芽瑠。 あ、あとこの企画はAKBINGO!の枠で行われるので、よろしくお願いします」

 ホテルの中で今日っす怪我説明をしているなか、僕は外に出て番組MCのバッドボーイズの到着を待っている。 2人とは仕事だけの関係ではなく、よく京介と共にご飯に連れていってもらってる。 ふと、山道が光った。 車のヘッドランプだと分かった時、走ってバンに向かった。 駐車線を無視して止められたハイエースから、特攻服を着た2人が忙しそうに降りてきた。

  「お疲れさまです。 急な話ですいませんでした。

優子さんとの対決でリーゼントを落として以来、風貌が丸くなった佐田さんが優しく答えてくれた。

  「本当は来たくなかったんやけど、お前らがいると聞いて飛んできたんやで」

その言葉に安心し、2人を控室に案内した。 その直後、2人を担当するマネージャーさんと打ち合わせに入った。 何度も仕事を一緒にしている人だったし、話はすぐについた。 
 
 恐るおそるメンバー達が待機するホールを覗くと、とても面白い光景が広がっていた。 肝試しを怖がって泣き出すメンバーや、それを励ますメンバー。 肝試しなんぞ関係なく、走り回るメン・・・なこみく。

  「あ、晃汰だ!!」

そのうち群れていたうちの莉乃さんが、ドアから覗く僕を発見してしまった。 逃げる際にチラリと見えたのが、吊るし上げられている京介だ。

  「京介、ご愁傷様」

殺気しかしない背後を覗くと、案の定メンバー達が追ってきていた。 50m6秒台の僕が捕まるはずはなかったが、狭いホテル内で進路を塞がれてしまえば詰みだ。

  「誰がこの企画考えたの!?」

 せりーぬやなつさんと言った足の速いメンバーにまんまと捕まり、莉乃さんが待つロビーに連れてこられた。

  「僕と京介は何も関与してませんよ。 僕らはなんも悪くないですよ!」

椅子に縛り付けられ、必死に無罪を主張する。 隠しナイフでロープを切り、立ち上がった。 身体中の関節を回しながら歩き、月が見える窓に近寄った。

  「肝試し日和の夜ですね。  もうその辺まで来てるかも・・・」

僕のこの発言に、一気にメンバー達は泣き喚いた。 嘘嘘と冗談めかし、やっと落ち着いた。 やっと縄を解いた京介が腕時計を見ながら近づいてきた。 僕と彼はアイコンタクトし、メンバーをロケ場所に誘導した。

 ロケ場所には既にバッドボーイズの2人も揃っている。 僕と京介は連絡用のねっどセットをもらって、メンバーに分からぬように森に消えた。 現場の様子と、ルートを歩いているメンバーのCCDカメラの映像を、リアルタイムで見れる端末をポケットに入れてある。 他には、メンバーに付けられたGPSで位置を確認できるし、僕と京介の位置もGPSによって確認できる。 京介は特殊警棒を2本携帯しているし、僕は麻酔銃にサバイバルナイフを持っている。 救急道具や非常食も隠しポケットに入っている。 準備は万端だ。

  「こちら本部の戸賀崎、晃汰、京介、応答してくれ」

 ノイズのないクリアな戸賀崎さんの声が、耳のヘッドセットから聞こえてきた。 先に京介が応答し、その後で僕も応答した。

  「そろそろオープニングが終わるぞ。 準備しとけよ」

  「了解」

本物の特殊部隊になったみたいに返事を返した。 戸賀崎さんも、かなりその気になっている。


Zodiac ( 2014/03/24(月) 10:07 )