AKBの執事兼スタッフ


















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第15章 合宿
77 storys 〜合宿4日目 3 バンド結成〜
  「コードは大体覚えられてるみたいですね。 あとは、コードチェンジと握力かなぁ・・・」

 会議が終わった後、スタジオで千尋さん(穴井千尋)とギターの演習をしている。 彼女はアコースティックギターであったことをすっかり忘れていた僕は、テレキャスをアン直(アンプとギターを直接繋ぐこと)で弾いている。

  「ネックが太くて押さえきれないんだよねぇ。 もうちょっと薄いのにしとけばよかったよ」

千尋さんが自身の左手を見つめながら言った。 口元に笑みが見えるだけで、眼は真剣そのものだ。 僕が用意した中級者用の楽譜を見ながら、指を弦に押し当てていく。 

  「僕のこのテレキャスはネック薄いですよ。 弾いてみます?」

ネックを気にしていた千尋さんに、僕の黒いテレキャスを渡した。 僕は千尋さんのアコギを受け取って、試しにひとかきしてみた。 アコギならではの深みのあるサウンドがなんとも言えなかったが、やはりアンプを通したテレキャスの音には及ばない。

  「凄い薄い! 握りやすいね!!」

驚きながらテレキャスを弾く千尋さん。 さっきのアコギの生音からは想像できないほどの、綺麗なサウンドがアンプから流れてくる。 この人とさや姉さんを、コラボさせたいという僕の願望がまた沸き起こってしまった。

 ふと、千尋さんがHKTのデビュー曲、 スキ!スキ!スキップ! のコードを弾いているのが分かった。 しかも、サビの最初は D なのに B を間違えて弾いていた。 それに僕は、コーラスとコードをのせる。 千尋キャップはメインボーカルメロディを唄い、3度上を僕はコーラスとして唄う。 見事なハーモニーを身体中で感じた時、スタジオの雄一の扉が開いた。

  「お邪魔しちゃった? 凄い楽しそうだったから、入っちゃった」

 そう言って入ってきた奴らは、よく知っている奴らだった。 僕とキャップとのハーモニーを壊された苛立ちを体現し、椅子に脚を組んで座った。 自然な流れでまどかはシンセサイザー、京介はドラムセットについた。 その流れがあまりにも自然すぎたので、僕は気にもかけなかった。 どうやら、少し長い休憩に入ったらしい。

  「そう怒るなって。 巧いシンセとドラムが来たんだから」

京介が、スティックを指で回しながら言った。 鼻で笑って椅子に座りなおした僕は、3人の方を向いて考えを話した。

  「この4人で、合宿最終日の打ち上げでバンドをやろうと思うんだけど・・・」

密かに胸に抱いていた考えを吐露した。 これだけメンバーが揃えば、なんだってできる。 京介は自信あり気に横目で見てきた。 残る2人も、首を縦に振っていた。

  「HKTのシングル2曲と、あと何かやりたいね・・・」

意外とノリ気な穴井キャップが、意見を出してくれた。 確かに スキ!スキ!スキップ! と メロンジュース の2曲は外せない。 だが、最低3曲はやりたいのが4人の意見だ。 できれば48グループの曲をやりたいと考える。

  「やっぱり最後はフォーチュンクッキーじゃない? さっしーに歌ってもらえばいいじゃん」

この意見を出したまどかは素晴らしかった。 早速その3曲に絞って練習を始めた。 京介がドラムスで、まどかがシンセサイザー兼ベース。 左手でベースの音を出しつつ、右手でメロディを奏でるという離れ業をこなす。 そしてメインボーカルだが、これはキャップがギターボーカルとして入る。 僕はリードギタリストとして参加する。

  「ギター2人いるし、俺も音が厚いギターサウンドだからあまり右手の心配はしなくていいよ。 どっちかと言うと、ベース音の方が大事だから・・・」

4人それぞれが、とりあえずそのパートのコードなんかをできるから、完成形になるのは難しいことではない。 意外とコードを知っていたキャップは、初めてとは思えないほどギターボーカルが巧かった。

Zodiac ( 2014/03/23(日) 11:21 )