AKBの執事兼スタッフ


















小説トップ
第15章 合宿
75 storys 〜合宿4日目 緩急〜
 まどかとの甘酸っぱい夜の翌日、少し寝不足気味の身体を動かしてわかはるとの朝練に向かった。

 グラウンドでは、既にわかはるが走っていた。 寝不足を理由に断った京介以外、皆揃った。

  「チェンジアップの仕組みはわかったか?」

入念に肩関節を伸ばしながら、わかはるに尋ねた。 彼女は柔軟をしながら答えた。

  「動画とかで調べたんだけど、いろんな投げ方があるみたい。 人差し指と親指でOKサインを作ったり、中指と人差し指と薬指で挟んだりとか・・・」

  「よく調べたな。 お父さんには訊かなかったのか?」

少し冗談交じりに訊いたつもりだったが、なんとわかはるはお父さんにもアドバイスを求めていた。 これには素直に驚きを隠せなかった。 

  「とりあえず、投げてみようよ」

 グラブを左手にはめ、近い距離からキャッチボールを始める。 徐々に離れていき、塁間より少し長い距離で投げ合う。 充分肩が温まったのを確認し、僕はキャッチャーボックス、わかはるはマウンドに移動した。

  「感覚だけで良いから、投げてみな」

グラブを外し、キャッチャーミットをつける。 今日はバッターがいないので、コントロールがつけやすそうだ。 
肩で深呼吸をしたわかはるは、振りかぶって腕を広げた。 振り下ろされた腕からはイメージできない、緩いボールが放られた。

  「すげえ! ちゃんとした緩急(チェンジアップ)じゃん!!」

他人事ながら興奮を抑えられない僕は、マウンド上のわかはるに走り寄った。 僕よりも、彼女の方が興奮を隠せていない。

  「今、スッってボールが抜けて・・・」

彼女の右手が震えている。 これで、わかはるは投げる事の快感を覚えてしまったのだろう。

  「今の感覚だよ。 今の感覚を忘れないうちに、もっと投げとこうぜ」

キャッチャーボックスに座っても、まだわかはるは浸っている。 数分してやっと正気に戻ったらしく、今度はセットポジションから投げてきた。 ・・・わかはるは何を目指してるのか。 割とマジメに考えてしまった。

 約1時間の朝練を終えて、グラウンドに一礼をする。 コンクリートの階段を上がるにつれ、スラッとした人影に気づく。 それも1人ではない。

  「見てたんですか? しかもなこみくも」

階段の上から僕達の朝練を見ていたのは、莉乃さんとなこみくだった。 眠そうな眼を擦る莉乃さんから考えるに、どうやらなこみくに叩き起こされたのだろう。 その証拠に、なこみくは爽やかな寝起きを迎えたようにハツラツとしている。

  「莉乃おばさんはまだ寝足りないから、そうっとしといてあげな」

優しく話しかけながら、莉乃さんからなこみくを略奪する。 それに負けじと莉乃さん。

  「こんなグラサンかけた危なっかしい人についてっちゃダメだよ〜 私とお散歩に行こ〜」

 結局、高校生と20歳のなこみく争奪戦は引き分けに終わった。 挙句、僕も3人の散歩に付き合わされるはめになった。

■筆者メッセージ
感想、待ってます!!

あぁ、なこみく可愛い・・・(小声)
Zodiac ( 2014/03/04(火) 22:34 )