74 storys 〜合宿3日目 4 告白〜
「晃汰って、好きな人いるの?」
恐らく咲良に言われて僕と話すことを決意したまどかは、こちらを向かずに訊いてきた。
「・・・聞いたら、ショック受けるかもしれないぜ」
すっと立ち上がり、手をポケットに入れて手すりに寄りかかった。 一呼吸おいてから、まどかの眼を見据えた。
「まどかが好きだ。 今抱きしめたいぐらい好きなんだよ。 けど、出来ないんだ・・・ 俺が好きになるのは、メンバーばかりだ・・・ だから、お前の好きな人はあえて聞かない。 俺がお前を好きなことは、片思いにしてくれ」
それだけ言い切って、前髪をかき上げた。 視界の真ん中に映るまどかの眼が、だんだん赤くなってくる。
「初恋の人と両想いになれないなんてやだよ・・・」
目元を押さえたまどかは、立ち上がってこっちに向かってきた。 抱き着いてくるまどかが視線の中でスローモーションになった時、初めて恋愛というものが切ないものだと痛感した。
「もし私がアイドルになんかになってなかったら、きっと普通に付き合えたね・・・」
その言葉を聞いたとき、僕は今以上にまどかの頭を強く押さえた。
「アイドルになってなかったら、お前とも出会えてなかったよ」
ツバを飲み込んで、さらに続ける。
「お前をフリたくなかったから、俺から告白したかったんだよ。 お前を傷つけたくなかったんだ・・・ 俺が告ってフラれる方が良いと思ってさ」
まどかは泣きながら、黙って聴いている。 掴まれている服が一層強く握られ、徐々に涙が染みてくる。 ここで泣かないでくれ・・・
「キスとかデートとかもしなくていいの。 ただ私の想いを晃汰に伝えたかったの」
涙声のまどかは、顔を僕の胸に埋めながら呟いた。 サラサラなまどかの髪を撫で、空を見上げる。
「この時間がずっと続けばいいんだけどね」
イタズラっぽく言った。 それでもまだまどかは放してくれない。 しばらくこのままで・・・
いや
願わくば、ずっとこのままで・・・