AKBの執事兼スタッフ - 第15章 合宿
73 storys 〜合宿3日目 3 夜の庭園〜
 咲良と話した会話ひとつひとつが、頭の中でリフレインしている。 そんなモヤモヤを振り払うために、いつもよりも力を入れてトレニーングに励んでいるが、暗雲は晴れないままだ。

 昼休み、僕は花音に電話をした。 そして、今自分自身が置かれている状況を話した。

  「別に、好きなら好きって言っちゃえばいいじゃん。 私に気を遣う必要ないでしょ。 だって、まだただの幼馴染なんだから」

丸みを帯びた少し低い声で、花音に怒られてしまった。 これでこそ、俺の元カノだ。

  「うん、そうするよ。 皆元気? 姉さんとか玲奈さんとか・・・」

  「元気だよ。 相変わらずだけどね」

電話の向こう側から、花音を呼ぶ声があった。 それで、僕たちは電話を切った。 恋人じゃない花音と電話で話すのは初めてだったので、少し新鮮な気がしていた。

 午前中の悩みが嘘だったかのように、午後はスッキリとしている。 メンバー達の歌のレッスンをサポートしながらでも、その爽快感は肌で感じ取れる。

  「喉だけで歌うと、意外と高い声とか出るんだよ。 けど、本当はお腹の底から出すイメージをつけてもらいたいんだよ」

歌の先生は、身振り手振りでメンバー達に教えている。 僕もボーカルをやることがあるので、これは良い練習というかレッスンになった。 聞きかじった技術を見直したり、今までの唄い方のレベルアップなど、メンバー並みに話を聴き入っていた。

 その日、夜ご飯を食べ終わってからまどかに呼ばれた。 場所は今朝、僕と咲良が話していた庭園だ。 長身の美人は先にベンチに座っていた。 コートのボタンを締めながら近づいた。

  「待たせて悪い・・・」

迷うことなくまどかの隣に座り、同じ方向を向いた。
  
  「あのさ・・・ 晃汰って、好きな人いるの?」

朝の咲良と同じ切り出し方をしてきた。 次に何が出てくるのか、大体イメージはできてしまう・・・

Zodiac ( 2014/02/26(水) 22:25 )