69 storys 〜合宿1日目 2 ぐぐたす〜
部屋に入った途端ベッドに吸い込まれてしまった僕は、なつさんからの電話がかかってくるまで爆睡していた。
「もうみんなホールにいるよ。 来ないの?」
おっとりとしていて、聴き入ってしまうような甘い声を聴いて飛び起きた。 キャリーバッグの荷物もバラしてはいなかったが、取りあえず携帯とカードキーだけを持って部屋を出た。 エレベーターを待っている時間はなかったから、階段を駆け下りた。
「遅いよ〜。 まだ始まってないけどね」
珍しく眼鏡をかけたなつさんが、微笑みながら近づいてきた。 まだ整わない息を押し殺し、汗を拭った。
「爆睡しちゃってて・・・ 記憶がないんです」
「私も少し寝たよ。 朝早かったしね」
たぶん、なつさんの声だけを収録したCDを売ったら絶対に売れると思う。 いや、僕だけにでも作ってほしい(笑)
そんな想像をしている時、前の扉が開いて秋元さんと戸賀崎さんが入ってきた。 戸賀崎さんにアイコンタクトされ、椅子に座るメンバー達の間をすり抜けて2人に近づいた。
「このプリントを配ってくれ。 お前と京介の分も入ってるから」
なにやら分厚い紙束を渡してきた戸賀崎さんは、プロジェクターに繋いであるパソコンの前に座った。 まさにHKT学園といった雰囲気の中、日程の説明やその他の説明が終わった。 僕と京介はメモ書きがびっしりなプリントを、ポケットにしまい廊下に出た。 永い会議は慣れていたが、メンバー達のちょっかいで溜まらなく疲れた。 今日はもう仕事はないので、助かった。
一息つこうとロビーに向かうと、まどかと咲良がソファに座って楽しそうに話していた。 その周りではゆかちゃんこと秋吉優花や、なこみくこと矢吹奈子と田中美久が鬼ごっこをしている。 ・・・正直、近寄りたくないのが本心であった。 だが、そんな時に近寄ってくるのが小学生だ。
「あ、晃汰く〜ん!」
奈子が僕を見つけて叫ぶと、小学生グループはリアル鬼ごっこを即時停止させてこっちに進路を変えてくる。 もしも僕の腰に立体起動装置が付いているならば、今すぐ外の森にでも逃げ出したい気分だ。
「君たちはいいよな、無邪気でさ」
3人の頭を撫でながら、まどかと咲良の向かい側に座った。 京介は小学生たちとどこかに遊びに行ったようだ。 相対する2人は、どうやらぐぐたすに載せるための写真を撮り合っているらしい。 そのうち、僕にまで写真を撮らせてくれとせがんできた。 仕方がないので、少し変顔をして収まった。 場の空気が和んだところで、指原支配人が現れた。
「私も入れて〜」
女子全開の莉乃さんを入れて、4人で撮った。 1番腕が長い僕が自撮りをする形で、4人とも収まった。 それを同じ時間に4人が一斉にぐぐたすにアップした。 一番最初にコメントが埋まったのは、まどかでもなく咲良でもなく、はたまた莉乃さんでもなく僕だった。