AKBの執事兼スタッフ


















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第14章 FNS歌謡祭
65 storys 〜ギタリストの絡み〜
  「鈴懸と BREAK OUT! をコラボすることになってるんだけど、今からコード覚えられる?」

 現実味を帯びた話を持ちかけてきた織田さんは、同時に2曲の楽譜を手渡してきた。 それをざっと目を通し、小脇に抱えた。

  「ソロがあるのは鈴懸だけなんだけど、この時に2人で弾きまくりたいと思ってるんだよ。 今から練習して、間に合いそう?」

心配そうに尋ねてくる織田さんに、大丈夫ですとだけ言って、自分のシステム構築に取り掛かった。 背後から織田さんが覗き込んでくる。 彼も、僕がどんな機材を使うのか気になるのだろう。

  「いつもそれだけの機材を持ち歩いてんの!?」

 ビックリしたように訊いてくる織田さんに、僕は笑いながら真相を話した。

  「コンパクト類はいつも車のトランクに入れてるんですよ。 けど、今回はTVに出るんで、ラック系を今持ってこさせてます」

  「ラックを揃えてるなんて、相当詳しいね?」

  「下手の横好きですから。 まだ聞きかじった程度ですけど・・・」

苦笑いを浮かべながら、機材の確認をする。 ライブや生放送にとってシステムトラブルは一番痛いので、入念に確認をする。

  「ちょっと音出してみようか」

 僕がギターを肩に掛けるのを待っていたかのように、織田さんはリハーサルを始めた。 鈴懸のコードは前から頭に入っているから、今はBREAK OUT! の楽譜だけを頭に叩き込めばいい。 今の時間は鈴懸のリハだけだ。

  「あれ? なんで晃汰がギター持ってるの?」

 不思議そうに話しかけてくる姉さんに、僕はドヤ顔で答える。

  「ギターで出るんですよ。 織田さんと一緒に」

納得したように首を縦に振る姉さんが位置につくのを確認し、僕も自分の立ち位置に立った。 サウンドの確認は既に終えていて、後はコードを曲に合わせて弾くだけだ。
 僕と織田さんでメンバーを挟むように配置され、演奏する。 織田さんはストラトタイプのギターで、丸みを帯びたメロディアスなサウンドを出している。 
 対する僕は布袋モデルのテレキャスで、錆びついて尖ったようなサウンドを広げている。 これは布袋さんがBOOWY時代に設定していたセッティングを真似て再現している。 だが、オリジナルには到底近づけないでいる。
 サビが始まる直前で、姉さんがステージ後方に置いておいたマイクスタンドをセンターに持ってきた。 それを使って、僕と織田さんは交互にコーラスを吹き込んだ。

  「音作り上手いね。 殆ど歪ませてなくて、その音はカッコイイよ」

 曲が終わった直後、織田さんが近づいてきた。 あまり僕のサウンドを褒めてくれる人はいないんだが、布袋さんを知っている織田さんは理解してくれた。
  「まだまだ、僕の機材は本気出してないですよ」

笑いながら返事をし、足元のボードを眺める。 まだ、使っていない幾つもの奴らが、出番を今かと待ちわびているようにLEDライトを点灯させていた。

Zodiac ( 2013/12/23(月) 19:58 )