62 storys 〜野球少女〜
合宿の話が出てから1週間後、とうとうその企画が現実味を帯びてきた。 この企画の全容が全メンバーに公表され、希望者を募ったのだ。 驚くことに、辞退をする者は1人もいなかったのだ。 僕ら以上に驚いていたのは秋元さんだった。 さすがに全員が一気に集まれる時間も場所もないので、グループごとで日程を分割することになった。 それに伴ってスタッフの割り振りも行われた。 もちろん僕と京介は同じで、HKTを担当することになった。 歳が近いということもあって、決められたのだろうと感じた。
「お!? ホテルのプライベートグラウンドもあるぞ!」
京介が資料に目を通しながら、素っ頓狂な声を出した。 奴は絶対に野球がしたいと言い出すだろう。
「ユニフォームにグローブ、バットにボールにスパイク・・・ 荷物が増えたな」
笑いながら京介に話しかけると、予想通りの答えを僕から貰えたことが嬉しそうな京介がいた。
「野球といえば、わかはるとかはるごんさん、もっちーさんもやりたいって言い出すんじゃない? 先に連絡しとくか・・・」
「そうだな。 あの人達のの事だから絶対にはしゃぐぞ」
真っ直ぐなツバをした帽子を被ったわかはるやはるごんさん、もっちーさんがイメージできて、笑いを堪えるのが大変だった。
「おい。 軟式か硬式か訊いてきたぞ」
携帯の画面を眺めたまま、京介がわかはるとのやりとりを話した。
「硬式じゃ怪我するから、軟式でいいだろ。 俺たちも硬式じゃ肩壊しちまうしな」
「わかった・・・」
京介は文字を打ち始めた。 数分後、わかはるからの変事がきた。 もちろんやらせてほしいときたらしい。 おまけに、ユニフォームとグローブ、金属ばっとを持参すると言い出してきたらしい。 他の2人からも予想の斜め上をいった返事が返ってきて、京介と僕は2人で笑っていた。