AKBの執事兼スタッフ


















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第9章 やっとスタッフに戻れました
48 storys 〜PV撮影〜
  「僕のPV撮影がロンドンであるんだけど、時間とれる?」
 握手会を終えて家に戻り、iphoneのメールをチェックした。 世界的ギタリストから、仕事の依頼が舞い降りていた。 几帳面な布袋さんだから、場所や時間なんかも細かく書かれていた。 その日のスケジュールを確認する。 
  「オフだ! ロンドンに行ける!!」
こんな奇跡に叫びながら、僕は興奮を押し殺しながらメールを書いた。 もちろん、布袋さんに宛てた返事だ。 

 学校には、
  「布袋寅泰のPV撮影に行くから休ませてくれ」
とだけ電話をして休みをもらった。 応対した先生は僕の身上を理解していたから、話がスムーズに進んだ。 今はロンドン行の飛行機に乗っている。 一応一日間だけ仕事に出れないかもしれないと、秋元さんに伝えておいた。 もしそうなったとしても、京介が僕の穴を埋めてくれる。

 長いフライトの次は、現地のタクシーに乗り込んだ。 約30分タクシーに揺られると、目的地に到着した。 既に長身の男は、スタッフと話し合いをしていた。 頃合いをみて、挨拶をした。
  「正直、来られないかな〜 って思ってたんだよ。 今日はいろんなことを勉強してよ」
布袋さんへの挨拶を終えて、次はスタッフさん達に挨拶して回った。 説明はされていたらしく、皆僕のことを知ってくれていた。 当たり前のことだが、僕の同年代はいない。 しかし、BOOWYやCOMPLEX、さらには80.90年代のバンドについての話は充実している。 最近のバンドよりも昔のバンドを好んで聴く僕にとっては、最高の環境だ。
  「今のバンドはきれいすぎるよね。 汗とかが似合わなさそうだし」
 カメラマンの1人と会話をしている。 この人も昔はバンドマンで、やはり布袋さんに憧れていたらしい。 話せば話すほど、奥が深い会話になってしまう。 久しぶりに、音楽への熱い気持ちを語った気がした。
 いよいよ撮影開始だ。 さっきまで参考として聴いていた新曲は、既に頭の中でリピート再生されている。 今回僕が担当する仕事は、あまり重要ではない機材の確認係だ。 さすがによそ者の僕が重大な役職につくのは回避したかったし、いろんな人の仕事を勉強したかったから都合が良かった。 その辺も、布袋さんが考慮してくれたのだろう。 
 お馴染みの幾何学模様のギターを持った長身のギタリストが、踊りながらギターを弾き、唄う。 いつも画面の中でしか確認できなかった景色が、今は目の前に広がっている。 

  「今日はありがとう。 PVが完成したら、送るよ」
 僕が参加したシーンでの撮影が終了し、布袋さんが笑顔で近づいてきた。 僕はそれに笑顔で返し、しばしの別れを告げてタクシーに乗り込んだ。 これなら、明日の仕事は普通に出れるな と、腕時計を確認した。

Zodiac ( 2013/12/01(日) 21:27 )