不器用な僕からあなたへ - 第一章
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高校3年生の冬、受験戦争真っ只中。そんな中は私はというと、AO入試で専門学校に合格し、一足先に受験を終えバイトに明け暮れていた。

そんな中、私は彼と出会った。

彼は大学2年生で、私が仕事を教えることになった。彼は2つの年上だが、ここでは私の方が先輩となる。とても気まずく、彼とシフトが被るのが憂鬱だった。

でも、彼と仕事をしていると、仕事の覚えは早いし、私が気まずくならないように話しかけてくれるし、なにより周囲を見て、人の事を思いやり行動できる人だということがわかり、彼に抱く印象は変わりつつあった。

「よかったね飛鳥。今日渡邉君とシフト被ってるね」

「え!?何言ってるの未央奈?べつによくないし」

「そんなこと言って、渡部君いない日テンション低いクセに〜」

「そんなことない!」

未央奈の言ったことは図星だった。彼と一緒に働きだして1ヶ月、憂鬱な気持ちは無くなり、むしろ一緒に働きたいと思っていた。.

そして、彼への気持ちは恋へと変化していった。

専門学校へと進学する、このタイミングで私はバイトを辞めることにしていた。これは彼が働き始める前から決めていたことだった。

だが彼と関係が終わってしまうと思うと、寂しかった。同級生で親友でもある堀未央奈にこのことを相談したら、告白して付き合えばいいと言われた。

今まで告白されたことはあっても、告白したことはなかった。どうしようか悩んだが、この気持ち区切りをつけるためにも、私は彼に告白した。

あの時の照れた彼の顔は今でも鮮明に覚えてる。私の告白は成功し、彼と付き合い始めた。

お互い苗字から名前で呼び合うようになった。初めてのデートは映画を見に行った。そこで彼と初めて手を繋いだ。そして初めてキスもした。

学校も学年も違い、あまり予定が合わず頻繁に会うことはできなったが、関係は良好だったと思う。

それから数ヶ月が経ち、彼と1ヶ月連絡を取れていなかった。でも、今月は彼が忙しいと言っていたので、私からは連絡はしなかった。

『久しぶりに会いたい』

1ヶ月ぶりの彼からの連絡が嬉しくかった。私は、照れ隠しで『いいよ』とだけ返した。

彼と日程を合わせ、久しぶり会えることになった。彼と会えるのが嬉しすぎて、テンションも高くなっていた。友達からは「飛鳥、どうしたの?テンション高すぎて気持ち悪い」と言われたが、そんな事は彼と会えるからどうでもよかった。

彼との待ち合わせの日、いつもよりオシャレをして待ち合わせ場所へと向かう。

『もうすぐ着く。もう着いてる?』

彼にメッセージを送るとすぐに既読になり、『もう着いてるよ』と返ってくる。すぐ既読になったので彼も私と会うのを楽しみにしてくれているのかなと、嬉しくなった。『了解』とだけ返し、少し急いで彼との待ち合わせ場所へと向かった。

しかし、待ち合わせ場所に行くと彼は知らない女の人と抱き合っていた。

「零…?」

私が彼に声をかけると、彼は驚いた顔をしていた。

「ごめん飛鳥、でもこれは違うんだ」

彼の言葉は耳に届いてはこなかった。私一人が浮かれていた。そう思うと涙が溢れてきた。

「最低…」

私は彼の頬に平手で殴り、その場から走り去った。

「飛鳥!!」

彼の叫ぶ声が聞こえたが、追いつかれないように全力で走った。どれくらい走っただろうか、私は走り疲れ近くの公園のベンチに座った。

スマホを開くと、彼からの着信が何件も入っていた。彼に1通のメッセージを送る。

『別れよ。さようなら』

そして、彼の連絡先をすべて消し、彼との繋がりを断った。これで彼とは終わり、そう思った瞬間、彼との思い出を思い出す。一つ一つの彼との思い出を全て鮮明に覚えている。そこには、私の大好きな彼がいる。嫌いになろうと思っても彼の事を嫌いにはなれない。私はまだ彼の事が好きなんだ。

私はこのどうしようもない気持ちを発散する術はなく、ただ泣くことしかできなかった。



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R.S. ( 2019/07/25(木) 00:12 )