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コンビニで昼食を買い研究室に戻ると、設楽先生も講義終え、研究室に戻ってきていた。
「お〜渡邉!」
僕はこんにちは、と頭を下げる。ソファはの方を見ると和樹の横で彼女は楽しそうに会話をしている。設楽先生が僕に声をかけたことで、彼女は僕が研究室に入ってきたことに気づいたらしく、手を振ってくる。
「零〜!久保ちゃん!」
「七瀬先輩!!」
久保は西野先輩の元に駆け寄り抱きついている。僕は設楽先生のときと同様に頭を下げた。
「零はそっけないなぁ。なな悲しいで」
「西野先輩違いますよ。零はただ愛しの先輩に会えて照れてるだけですよ」
「そうなん?やっぱ零はかわいいなぁ」
僕は二人の弄りを無視し、研究室にある4人掛けのテーブルに座り昼食をとる。
ゼミでの飲み会の際に、和樹が僕が西野先輩の事が気になっていたことをバラしてから、設楽先生やゼミ生からもからかわれるようになった。そして今では西野先輩からも。
「零君最近カノジョさんとはどうなの?」
横に座って昼食を摂る久保から尋ねられる。
「う〜ん、最近ちょっと連絡取れてないんだよね。まぁでも飛鳥、LINEとかするのあんま好きじゃないし、まぁそんな問題はないと思う」
「そーなんだ。でもいいなぁ。私も彼氏欲しいなぁ」
「恋バナ?ななもいれてや」
ソファから移動し、僕の前の席に腰を掛ける西野先輩。
「零君、付き合ってどれくらいだっけ?」
「半年くらいかな」
「連絡取れてないのって、倦怠期なんじゃね?」
いつの間にか西野先輩の隣の椅子に座っていた和樹から発せられた言葉に、違うと言い返すことはできなかった。
カノジョとはバイト先で出会い、彼女がバイトを辞めるときに告白され、付き合うことになった。大学も違うし、年齢も彼女の方が2つ下で、何かと生活リズムに違いがあり、頻繁に会う事もできてはいなかった。
だがそれでも付き合ってすぐの頃は、頻繁に電話したり、頑張って予定を合わせて会ったりしていた。しかし、今はあまり会えてないし、それどころか連絡もほとんど取れていない。
「カノジョさんとどれくらい連絡取れてへんの?」
西野先輩からの質問が飛んでくる。
「2週間です」
本当は一ヵ月だ。何故か見栄を張り、少し嘘をついてしまった。だが西野先輩と久保ちゃんの驚きぶりを見ると、本当のことは言わなくてよかったと思った。
「それって付き合ってるって言えるの?」
久保からストレートな攻撃が飛んできた。
「たしかにそれは付き合ってるとは言えへんやろ」
西野先輩からもストレートな攻撃が飛んできた。僕のメンタルのHPは二人によって尽きようとしていた。
「まぁ二人とも、そこまでストレートに言わなくても。零のメンタル崩壊寸前ですよ。こんな暗い話より、ゲームしましょうよ!」
彼女との事情を知っていた和樹が僕のメンタルのことを見かね、助け舟を出してくれた。和樹は知っている。連絡が取れていないのが本当は1ヶ月だということを。
和樹と久保ちゃんはソファの方に行き、ゲームをする準備を始める。ただ西野先輩は僕の前から動かない。
「西野先輩はゲームしないんですか?」
「するで。でも零に言いたいことがあって」
「なんですか?」
僕にしか聞こえないないで西野先輩は囁いた。
「ななは、零のこと好きやで?」
「え!?」
時が止まったように感じた。あの西野先輩が僕の事を。そんなことが…今我が身に起きた事を理解しようと脳をフル回転させていると、パシッという音とともにおでこに衝撃が走る。どうやら僕は西野先輩からでこぴんを食らったらしい。
「冗談やで。やっぱ零の反応は可愛いな」
西野先輩は笑顔で僕の頭を撫でてくる。やめてくださいといいながらも、満更でもない自分もいた。彼女がいるのにこんなこと思うのは、良くないとは思うが、僕の中には、まだ西野先輩のことが好きな僕がいるのかもしれない。