6章
12
「七瀬、起きて」

「んっ……んー」

眠っている七瀬を起こし最寄りの駅で降りる。手を繋ぎ七瀬の家の方面へ向かって歩く。
時刻はもうすぐ22時になる。

「なあ裕樹」

「ん?」

「……やっぱ何でもない」

繋いでいる手に力を入れては緩めてを繰り返している七瀬。
何かを言いたいのが伝わってくる。
俺が立ち止まると、七瀬が振り返った。

「どうした?」

「……あんな、今日ななお家で1人やねん」

「うん」

「だから、その……もうちょっと一緒におられへんかな?」

「いいよ」

「ほんま?ワガママやとか思わへん?」

「思わない。女の子はちょっとワガママなぐらいが良いよ」

男としては、少しワガママを言われるぐらいが嬉しかったりするのだ。
言葉では嫌がって見せても内心は喜んでいる。そんなものだ。

「良かった……。こんなに楽しかったのに急に1人になっちゃったら、なな寂しくて死んじゃうとこやった」

「七瀬に死なれたら困るな」

再び歩き出す。
どうやら今日七瀬の両親は親戚の家に行っているらしく、明日の夕方まで帰ってこないそうだ。

「あ、ちょっとコンビニ寄っていい?」

近くのコンビニに入っていく七瀬。
飲み物を買って出てきた。

「お待たせ。はいこれ、こんなんじゃお返しにならへんけど、今日のお礼」

「ありがとう。そんなことないよ」

七瀬から貰った紙パックジュースを飲みながら、まったりと歩き、色んな話をする。
そして七瀬の中学時代の話に。

「なな、中学1年生の時な、虐められててん」

「えっ……」

「クラスの男の子に告白されて、断ったらそっから」

最初は仲間外れにされる事から始まり、次第に皆んな口を聞いてくれなくなったそうだ。
挙句には乱暴な事をされたという。
心身共にボロボロになった七瀬を見兼ねた両親が引越しを決めたそうだ。
そしてこちらの中学に転校し、出会ったのが斉藤。

「転校してからもトラウマで、孤立してたななを優里が助けてくれてん」

斉藤の性格上、困っている人を放って置けないのだろう。
いつも1人でいた七瀬に積極的に関わって来たという。
それから心を開いた七瀬は、斉藤の協力もあってか、こうして立ち直り今に至るらしい。

「最初裕樹が話しかけてくれた時な、思ってん」

「……」

「裕樹は私の知ってる男の子とは全然違うって。こんな優しい人おるんやなって」

「七瀬……」

俺にそっと抱き着く七瀬。
腰に回された手がキュッと締め付けられる。

「なな、裕樹の事……好き」

少し離れた七瀬がゆっくりと目を瞑る。
徐々に近づく距離。
七瀬の唇が俺の唇に触れた。

「ななのお家、来てくれへん……?」




イヴ ( 2018/07/13(金) 14:33 )