4章
01
その日の昼休み。
食堂に向かう俺を後ろから呼ぶ声がする。

「ちょっと、そこの男子生徒君!」

「ん、俺?」

「俺もなにも、今ここに男子あんただけなんですけど。うける〜」

振り返ると、手を叩いて笑っている志田がいた。
まあ志田の事は理佐から聞いて一方的に俺が知っているだけなのだが。

「あー面白い。ねぇ、名前なんて言うの?」

「東雲だけど」

「違う、下の名前」

「裕樹」

「じゃあ裕樹。聞きたいんだけど今朝、理佐と一緒に歩いてたよね?」

俺は誰かに何かを見られる能力でも持っているのだろうか。
別にやましい事では無いし、隠したい様な事でもないのだが、勘違いされるのは困る。

「ねぇねぇ、理佐とどういう関係?」

ニヤニヤしながら、そしてかなりグイグイ来る奴だ。
志田の事は正直よく知らないが、理佐とは真逆のタイプの様な気がする。
だから上手くやっているんだろう。

「家が隣なだけだよ。志田さん」

「えっ、マジ?なんかそれ凄くない?運命的な?えっ、てか、何で私の名前知ってんの?」

こいつよく喋るな。
喋ったら満足するタイプだろう。
そしてそれを理佐が聞き流す。
その構図が俺の頭に浮かんだ。

「まあ何でもいいや。食堂行くんだよね?私も行くから早く行こうよ」

俺の腕を取り、歩き出す志田。
ほんと、この学校はいろんな奴がいて面白い。
スタスタと歩いてく彼女の背中を見ながら俺はそう思った。
しかしこの状況は少し恥ずかしい。
周りの視線が刺さる。

「ねぇねぇ、今の私達カップルに見られてんのかな?」

相変わらずニコニコしている志田。
ただ引っ張っていた腕を志田は自分の腕と組み交わし、隣に引っ付いてきた。

「さあ。まあこれは流石にそう見られても仕方ないとは思うけど」

「なになに〜?照れてんの?うける〜」

きっとこいつの口癖はうける〜だ。
こちらからしてみれば何も面白くはない。そして照れてもいない。

「私さー、性格が女の子っぽくないんだよねー。中学ん時とか普通に男子に混ざって遊んでたしさ」

それ故のこの距離感か。
妙に納得した。
確かに、ぶりっ子と呼ばれる奴がする様な感じではなく、ただ単にそれが普通の事になっているような感じだ。
何でかはわからないが、うちのクラスの秋元が頭に浮かんだ。そう、何でかはわからないが。

「あ、あそこ空いてんじゃん。行こ行こ」

ほんと、何となくだが男友達と接しているような感覚。
さぞかし勘違いをしてきた男達がいるのであろう。心中お察しする。





イヴ ( 2018/06/26(火) 04:02 )