11章
04
迎えた学園祭当日。
思った以上にうちのクラスは盛況で、オムライスは残り2食分となった。
秋元の接客は本物のメイド顔負けのもので、それが口コミので広まり、かなりのお客さんを呼んだのだ。

「あなたのハートにズッキュン!」

ケチャップを手にオムライスにハートを描く秋元。
そしてお馴染みのフレーズが意外にも好評なのだ。
好評と言えばこれまた意外なもので飛鳥の接客だった。

「あの……ハート書いてください!」

「やだ」

「そんな……」

「……しょうがないなあ。別に、私が書きたくなっただけだからね」

「きゃー!」

顔も名前も知らない女子生徒相手にしっかりと毒を吐く飛鳥だが、ある種のツンデレ対応がなかなか受けていた。
というか女子でもこういうの好きなんだな。

「はいオムライス。あと1食で終わりな」

「おっけー!みんなに伝えとくわ」

作ったオムライスを七瀬に渡す。
残り1食分は白石が作るだろう。
この空気で出て行くのは非常に辛い物があるが仕方ない。意を決して厨房から出る。

「うっ……」

一斉に視線を集めてしまった。
無理もない。明らかにおかしいもんな。メイドの中に1人混ざっている執事って。
いや、まあそれだけじゃないか。

「あー!!」

教室内のお客さんが大きな声を上げる。
そちらを見ると、よく知った顔だった。

「あっ」

気付いた時には猛ダッシュでこちらに走り込んで来ている。

「ゆうくーん!!」

俺が捉えたのは、その相手の体が宙を舞い、俺目掛けて飛び込んでくる姿だった。

「ちょ、待て、うわっ」

その相手を受け止めたものの、あまりの勢いに後ろに倒れ込む。
その最中、俺はキャンプで行った海を思い出した。
あの時もこんな感じだったな。
でもあれ海だから大丈夫だったよな。

「痛ってぇ」

固い教室の床は優しく包み込んではくれなかった。

「ゆう君!ここで会えるなんて思うとらんかった!嬉しか〜。ずっと会いたかったんやけんね!」

倒れている俺の上にちょこんと乗っかったまま、1人話し続けるこの女。
久々に会っても何も変わっていない。

「おい、方言出てるぞ」

「はっ」

口を抑え慌てた表情をしている。

「とりあえずどいてくれ」

俺はあまりこいつと話したくないのだ。
理由は単純。
名前の読み方が俺と一緒だからだ。
それに加えて、苗字で呼ぶとすこぶる拗ねる。
ああ、面倒な事になった。


イヴ ( 2018/09/24(月) 23:33 )