10章
03
自転車を止め、教室へ急ぐ。
始業のチャイムが鳴った。

「急げ生田!」

「うん!」

階段を駆け上がり、勢い良く教室の扉を開ける。

「セーフ!」

俺は思わず叫んでいた。それと同時にチャイムが鳴り終えた。
クラスメイトの視線が刺さる。
俺の後ろで生田もひょっこり顔を出し、中を覗き込んでいる。

「あんた達、ギリギリのギリよ。全く、何してたの」

黒板の前に立っている新内先生が腕を組みこちらを見ていた。

「いやー、綺麗でお美しい新内先生の授業が受けれると思うと夜も眠れなくて」

「私もでーす」

「……んふっ。ほら、早く座りなさい」

思いの外チョロいな……。
頬がゆるゆるの新内先生を横目に、俺と生田は席に着いた。

「あっぶねー」

俺は座るや否や机に突っ伏す。

「何あの言い訳。バカなの?」

チラリと横を見ると飛鳥が笑っていた。
我ながら酷い遅刻理由を考え付いたものだ。

「うるせぇ」

俺は再び突っ伏す。

「ツンツン」

前方に伸ばしている俺の手を突きながら、効果音を口にするのは、斉藤だった。
顔を上げると、斉藤がこちらを向いている。

「東雲君……おはよ」

「おはよう斉藤」

斉藤はニコッと笑うと、前を向いた。
俺から声を掛けるべきだったのに。
また後でちゃんと謝ろう。

「おい、何だその良い雰囲気は。ほれ、飛鳥ちゃんにおはようの挨拶は?」

「あ、どうもおはようございます飛鳥さん」

「ねぇ!違う!なんか思ってたのと違う!」

どうやら今日も一日平和になりそうだ。




イヴ ( 2018/09/07(金) 08:38 )