9章
24
白石の手を握ったままモールを歩く。
ふと白石の顔を見るとものすごくニヤニヤしていた。

「え、なに」

「んふふ。俺の麻衣だって」

「いや、それはその」

「分かってる。でも今ぐらいはその気でいさせて?」

相変わらずニヤニヤしたままの白石と手を繋いだまま、少し早いが祭り会場に向かう。
ほんの少し日は傾き始めてはいるが、まだまだ明るい。
それなのに既に多くの人で賑わっていた。

今日は花火が上がる事もない。
ただただ屋台を周り、雰囲気を楽しんだ。

「んーっ。楽しかったね!」

「そうだな」

完全に日は落ち、街灯の灯りが夜道を照らしている。
あれ以来、繋いだ手は離れなかった。

「もう夜だね」

「ああ」

「帰らなきゃいけない時間だね」

「……そうだな」

楽しい時間はあっという間。
1日がもっと長ければ良いのにと思った事は少なからず1度はある。だが、これはどうにもならない自然の摂理だ。

「ねえ東雲君」

「ん?」

「私ね、この後誘われても良いように覚悟はして来たんだ」

「えっ……と」

「男の子と2人きりで遊ぶのって、女の子は期待しちゃうものだよ?」

不意に白石が立ち止まる。

「でも今日はいいの」

俺は立ち止まった白石の方を見る。
繋いでいた手が離れた。

「あの時、凄くキュンキュンしちゃった。かっこ良かった。助けてくれてありがとう」

「いや、普通だよ」

「うんん。それを普通だって言えるのは東雲君だからだよ」

白石が俺の目を見つめている。吸い込まれそうなほど綺麗な目が。

「またデートしてくれる?」

「ああ。もちろん」

「ふふっ。嬉しい」

グッと白石の距離が近づく。
少し背伸びをした白石の唇が俺の唇に触れた。

「次のデートは……この先も期待してるね?」

ほんのりと頬を染めた白石の顔が街灯に照らされていた。




イヴ ( 2018/09/04(火) 05:44 )