8章
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鈴木と2人、しばらく散歩をした。
少しずつ陽が傾き始め、空は茜色に染まっていく。
海に沈んでいく夕日を背に、コテージに戻る。

「準備するか」

「私も手伝うよ」

そろそろ他の面々もお腹を空かせ戻ってくる頃だろう。
鈴木にお米を洗って貰っている間に、野菜を切り、カレーを煮込む。
良い匂いだ。
後は焚き火を準備したら終わりだ。

外に出て焚き火の用意をしていると、出かけていた面々が戻ってきた。

「わー!キャンプファイヤーだ!」

斉藤を先頭に、赤々と燃える火の周りに皆んなが走ってくる。

「もうすぐ晩ご飯出来るから、皆んな手洗ってきな」

一斉にコテージへ駆け込んで行く。

「裕樹君」

「ん、どうした生田?」

「何から何までありがとう。その、裕樹君は楽しめてる?」

その場に残った生田が俺の元に駆け寄ってくる。
申し訳なさそうな顔をしていた。

「ああ、こうやって皆んなとワイワイ出来る事なんて滅多にないし。俺もちゃんと楽しんでるよ。ほら、生田も手洗ってきな」

「うん!ありがとう!」

各々が楽しんでくれているならそれでいいし、こういう事をするのも嫌いじゃない。
それに、今日という日は間違いなく大切な思い出になるはずだ。

後を追って走って行く生田の背中を見ながら俺はそう思った。

「いただきます!」

真っ赤に燃える炎を囲み、カレーを食べる。
外で食べるカレーは普段食べるものより美味しく感じる。

「明日には帰るんだよね」

カレーを食べる手を止めポツリと呟く白石。
火に照らされたその表情は少しばかり寂しそうだ。

「やだー、帰りたくなーい」

駄々をこねる志田。
確かにまだまだ遊んでいたい。
でも、ここにいる全員がそう思っても今日で最後なのは変えられない。

「また来ればいいよ。来年も、再来年も」

「お、バカ裕樹の割には良い事言うじゃん」

「おい、バカは余計だっての。それに飛鳥より賢いんですけど?」

「ほんとムカつくぅ!」

皆んなの笑い声が響く。
これだけ楽しい時間を過ごしても、それでもまだ足りないと思ってしまう。
人間とはやはり欲の塊なんだろう。

パチパチと火が散る音をが聞こえる。
らしくない事を考えてしまった。
別に今日が最後じゃない。
なんならこれから先の楽しい事の第一歩だ。

皆んな笑っている。
この光景が見られるだけでも十分だ。




イヴ ( 2018/08/11(土) 07:57 )