8章
14
「東雲くーん!」

「えっ?」

勢い良く走って来たずみこが、波打ち際に立っていた俺の背中に何の遠慮もなく飛び乗る。
そのまま海の中へ倒れる俺たち。

「あははは、楽しい〜!」

無邪気に笑っているずみこ。
天真爛漫な彼女を見ているとちょっとした嫌な事ぐらいなら忘れられそうだ。

立ち上がり、ずみこに手を差し出す。

「いきなりはビックリするからやめて貰っていい?」

「えっ、じゃあ、いきなりじゃなかったらいいんだね!」

俺の手を掴み立ち上がるずみこ。
あー、そう捉えますか。

そんな俺たちを見ていた志田と理佐も同じように飛び付いてくる。

「ちょ、タンマ!うわっ」

水飛沫が上がる。

「あっははは、ビショビショ。うける〜」

爆笑する志田の横で同じように理佐も笑っている。

「ねぇ、裕樹、前髪変じゃない?」

前髪をずっと直している理佐。
崩れるのが嫌ならやめときゃいいのに。
海水で張り付いた理佐の前髪を整えてやる。

「ああっ、理佐ずるい。裕樹私も」

「ええっ、私にも!」

何だこいつら。どうせまた崩れるだろうに。

「はいはい」

そんな俺たちの横にビーチボールが飛んでくる。

「東雲君、へいパス!」

白石が両手を上げて呼んでいる。
しかし白石は本当にスタイルが良い。
真っ白なビキニ姿はまさにモデルさながら。
俺はボールを放り投げた。

浅瀬で遊び始めた3人組を横目に、俺は海から上がる。

「あーすーかーちゃーん、こんなとこで1人何してんの」

「うるさい。裕樹はそうやって色んな子とイチャイチャしてたらいいんだ」

少し離れた砂浜で1人砂遊びをしている飛鳥。
一体なぜそんな言い方をされなければいけないのか。

「拗ねてんの?」

「拗ねてない!」

「ほら、行くぞ」

「あっ……」

飛鳥の手を無理矢理引き、波打ち際へ連れて行く。
そのまま飛鳥をお姫様抱っこの形で抱き上げる。

「えっ、ちょっと!」

「せーの」

俺は飛鳥を海へ放り投げた。
飛鳥の悲鳴が着水と同時に途絶える。
小さな頭が海面から出てくると同時に、物凄い形相で睨まれた。

「バカ裕樹!やりやがったな!」

「でも楽しかっただろ?」

「ま、まあ、ちょっと……だけ……」

口元まで海に浸かり、ブクブクしているせいでなんて言っているのかあまり聞こえないが、多分楽しいんだろう。

ふと後ろに気配を感じる。
嫌な予感。

「次私の番!」

ニッコニコの北野。その後ろには、いつかの教室の時と同じような列。
しかし、しっかり鈴木まで並んでいるのには驚いた。

順番に海へ放り投げて行く。
叫びながら飛ばされるやつもいれば、笑いながら飛ばされるやつ。はたまた無言で海に沈んでいくやつ。
これだけでも色々な性格が垣間見れる。

最後の1人は七瀬。

「七瀬はいいのか?」

「えっ、いや、したいんやけど……」

「ん?」

「その、重いとか思われたらどうしようって」

相変わらず心配性な女の子だ。

「そんな事思わない。むしろ七瀬は軽すぎ」

戸惑う七瀬を無理矢理抱き上げ思いっきり放り投げた。

全員無事投げ終えた俺。
筋肉痛は避けられなさそうだ。




イヴ ( 2018/08/01(水) 12:18 )