8章
12
「東雲君起きて?」

「んー」

鈴木の声で目が覚める。
どうやら到着したようだ。
ふと気付く。
鈴木の肩にもたれかかっていた事に。

「あ、ごめん。もしかしてずっともたれかかってた?」

慌てて体を起こす。

「うんと、東雲君の隣に座ってから5分後ぐらいには」

ということは出発から到着までのほぼ全ての時間、俺は鈴木にもたれかかっていた事になる。

「言ってくれたら良かったのに」

「あんなに気持ち良さそうに眠ってたんだもん、言えないよぉ。それに全然迷惑じゃなかったから大丈夫だよ?」

秋田美人は性格まで美人だった。
でも隣が鈴木だったおかげでぐっすり眠れたのも事実。
鈴木には感謝しなければ。

「ごめん。でもおかげでぐっすり」

「うふふ。どういたしまして」

バスを降りてすぐ、先に降りていた理佐に無言で蹴られたのは納得いかない。
おそらく鈴木にもたれかかっていたのを見た結果なのだろうが、そもそもの原因はあんただ。

「とりあえずコテージ行こう!」

斉藤の先導で、宿泊するコテージへ向かう。
この人数なのでかなり大きい物を借りたらしい。ツテが凄すぎる。
コテージへ向かう途中、斉藤が部屋割りを書いた紙を見せた。

「寝室が3つで、4人一部屋なんだけど……」

斉藤が言いたい事は紙を見なくてもわかる。
唯一男の俺がそこに混じるわけにはいかないだろう。

「俺寝室使わなくて良いから気にすんな」

「ごめんねぇ」

こうなるのはもともと予想していたし、そうなる事を望んでいたのも事実。

1つ目の部屋が、理佐、鈴木、七瀬、斉藤。
2つ目の部屋が、北野、白石、ずみこ、堀。
最後が、志田、秋元、生田、飛鳥。

おそらく斉藤もかなり悩んで考えた組み合わせだと思う。しかし、隣のクラスの3人との仲を深めるには良い組み合わせだと思った。

「デカっ」

コテージに着いた俺たちが口を揃えて発する。
2階建てで、ウッドデッキやらなんやらと、なんでも出来そうだ。
各自部屋に入り荷物を置く。
俺の寝床はリビング。
設備も充実しており、着替えと食べるものさえあれば余裕で暮らせる。
こんな所で1日でも生活したら元の暮らしに戻れなくなりそうだ。

まずは海で遊ぶ。
皆んな水着に着替えを済ませて、その上に服を羽織っている。
浮き輪やら飲み物やら、必要な物を持ち皆んなで歩いて行く。
知ってたよ、俺が荷物持ちになる事ぐらい。
両手に大量の荷物を持ちながら先行く女子たちの後をのそのそと追いかける。
キャッキャはしゃいでいる声が遠のいていく。

「手伝うよ?」

その集団から離れ、俺の隣で荷物を持ってくれるのは、堀と鈴木だった。

「ありがとう。皆んなと行っても良かったのに」

「東雲君、私と絢音があんなにはしゃぐタイプに見える?」

「うん、見えない」

ハーフパンツにパーカーを羽織り、麦わら帽子姿の2人。
お揃いの格好をしている。2人ってそんな仲良かったのか。

俺の視線に気付いたのか、堀が近寄ってくる。

「ふふっ。そんなに私達の水着姿が見たいの?」

ゆっくりとパーカーのジッパーを降ろしていく堀。

「ほら、絢音も。東雲君が私達の水着姿を見たくて仕方ないんだって」

こいつのヤバさを忘れていた。
鈴木がいる前でとんでもない事を言ってくれる。

「もうっ、未央ちゃん。そんな事言わないの」

鈴木に諭され、途中まで下ろしたジッパーを上げる堀。
ヤバイ堀と、真面目な鈴木。
絶妙なバランスなのだろう。

2人の協力のおかげで、楽になった。
先に行った皆んなが待つビーチへ足早に向かう。




イヴ ( 2018/07/31(火) 12:41 )