8章
06
漕ぎ始めてすぐ、角を曲がった所でおまわりさんに遭遇。

「2人乗りは危ないから降りなさい」

やっぱ厄日だと思う。

仕方なく自転車を押しながら歩く。

「ずみここっち歩いて」

「ん、どうして?」

「いいから」

俺はずみこと場所を入れ替わり、道路側を歩く。
丁度横を車が通過する。
こんな小柄な子が車にでも当たったら吹っ飛んでしまいそうだ。

「あっ……。えへへっ。ありがとう」

「ん、何が?」

「んふふ、何でもないよ」

たわいもない話をしながら歩く。
気付けばずみこの家に到着した。

「送ってくれてありがとう!ぎゅーっ」

「何してんの」

俺の背中に抱き着くずみこ。

「こんな所あの2人に見られたら怒られちゃうなぁ」

「あー、それは勘弁」

「私、東雲君がどんな人か分かった」

「俺もずみこがどんな人か分かった」

「え、なになに?」

「お馬鹿」

「ぶー!」

怒っても怖くない。
俺の背中をポカポカと叩くずみこを引き離し、頭を撫でてやる。

「はいはい、良い子は早く寝なさい」

「えへへっ、って、子供扱いしないでよぉ!」

嬉しそうな顔をしたり怒ったり、表情の変化が激しい奴だ。

手をブンブンと振るずみこに軽く手を振り返し俺は帰宅した。

自分の部屋に入り、部屋着に着替えベットに腰を下ろすと部屋の扉が開き、理佐が入って来た。

「お風呂借りたよ」

「あいよ」

「裕樹も入っちゃえば?」

「んー、そうする」

一階に降り、洗濯機に制服を放り込みそのまま浴室へ。
1日の汚れを洗い流し湯船に浸かる。
また入浴剤だ。

「また理佐が勝手に……って、なんでやねん!」

七瀬にも満足して貰えそうなほど自然な関西弁が出たと思う。
いやもう訳がわからん。
なんか普通な感じを醸してたけどおかしいだろ。
もう完全にうちの住人と化してるじゃないか。
ドアを開けたら居るっていう事に慣れ過ぎて、逆にドアを開けて入って来ることにすら違和感を感じなくなっている。
感覚の麻痺だ。

慌てて風呂から上がり部屋に戻ると、例の如く理佐はベットで漫画を読んでいる。

「ん、早かったね。そんなに私に会いたかった?」

「ちげーよ。いや、そうじゃなくて、何で当たり前かのように居るんだって」

「裕樹は私がいたら迷惑なの?私泣いちゃう」

棒読みにも程がある。
目の下に手を当てて泣いたふりをしているが、パッチリ目は開いてるし乾いている。

「嘘泣き下手くそすぎだろ」

「うるさい。私言ったよね、独占欲強いって」

「え、あ、まあ」

「どうせキャンプで他の子とイチャイチャするの目に見えてるから、その日までは私が裕樹を独り占めするの」

風呂上がりでまだ少し濡れている髪の毛が、理佐に妙な色気を与えている。
一瞬だがドキッとしてしまった。

「お、おう」

「何、不満?」

「いいえ」

「よろしい。毎晩一緒に寝るから」

「ええっ?」

「……」

目が怖いです。人殺せそうな目してるよ今。
吠えてる犬も鳴き止むよ。

「あー、わかったわかった」

「ふふっ」

いつもの柔らかい表情に戻ると、漫画を閉じ俺に抱き着いてきた。

「暑いんだけど」

「うるさい」

いつになく積極的な理佐に、俺は正直な所動揺を隠せなかった。






■筆者メッセージ
閲覧数10万突破致しました!
ありがとうございます!
1つの目標達成です。
次は20万を目指して頑張って参りますので、皆さまこれからもよろしくお願い致します!
イヴ ( 2018/07/28(土) 10:19 )