業火
04
入院中の患者や看護婦を横目に友一は、『柴田阿弥』と書かれた病室を見つけた。

「ここに・・・阿弥が・・・」

ガラガラガラ!

勢いよくドアを開けると、目を開けたまま天井を見つめる阿弥が横たわっていた。

「阿弥・・・」

友一が呼びかけると、阿弥はゆっくりとこちらを向き、

「友一君・・・」

とつぶやいた。

「友一君も無事だったんだね・・・ゴホッ、ゴホッ・・・」

「大丈夫!?」

友一が阿弥に駆け寄ると、

「心配しないで、大丈夫だから。」

と少し笑って言った。

「その・・・ゴメン!」

友一が、自分の勘違いについて謝ると、阿弥は

「どうして謝るの?」

と聞いた。

「いや・・・だって僕は、阿弥に・・・ひどい事を・・・」

「気にしないで。」

友一の言葉を遮るように、阿弥は口を挟んだ。

「もう・・・気にしなくていい・・・あなたがそこに居さえしてくれれば・・・それで・・・」

阿弥は友一の腕をつかみ、肩に眉間を擦り付けてきた。

「ずっと・・・寂しかったんだ。北川君と別れたあの時・・・本当は牧野君に会いたかった。でも、もう私の顔も見たくないと思ってるんだって、勝手に思ってて・・・でも、本当に会いたかったんだよ・・・しばらくは・・・ここにいて・・・私と一緒に・・・」

阿弥は涙をこらえながら友一に思いのたけを吐露した。

一方の友一は、阿弥が話しているとき、涙をこらえることもせず、ただ阿弥を今までよりも強く抱きしめていた。


その様子を、頼人や奈和達はしばらく見守った後、病室をあとにした。













darkhero ( 2014/06/29(日) 11:30 )