01
「そんな・・・こんなことって・・・」
阿弥の家についた友一は、目の前の光景にただ呆然としていた。
阿弥の家が、真っ赤な光を放っているのだ。黒い煙をもうもうと立て、たまにパキン、と音を鳴らしながら、ゆらゆらと揺れている。
友一がその光景をただただ見ていると、近くにいたおばさん二人の会話が聞こえてきた。
「一体どうしたの?これ。」
「なーんか恋人とトラブルになってたらしいわよ。今日も昼間っから喧嘩しちゃって。」
「まぁ。」
「噂によると、彼氏さんが腹いせに放火したらしいわ。」
「あらやだ。若いってなんていうか、面倒ねぇ。」
「さらにこの家の子、ちょっと前に変なおじさんから金を巻き上げて家に連れ込んでたらしいわ。ま、当然の報いって感じね。」
憎たらしい事ばかり語るこの二人の会話は、しばらく続いた。
雄伍は、阿弥と付き合い始めてから、休日はもちろんのこと、たまに、平日の学校を抜け出したであろう時間に彼女をショッピングモールに連れ込み、方々で金を彼女に払わせていた。
そして、そんな雄伍に我慢ができなくなった阿弥は、ついに雄伍と別れることを決意、公園に彼を呼んで別れ話を切り出したが、雄伍が逆上し、最終的にこのような結果になってしまった。
友一は、本当に自分の行いが間違っていた事に気づいた。
阿弥は、学校で誰にも心を開くことができないだけでなく、近所の人からも煙たがられており、それが彼女の孤独や人間不信につながっていたのだった。
そんな彼女を、一時の勘違いで突き放し、誤った道へ突き落としてしまった。これ以上の後悔は無い。というくらい友一は後悔した。
「嫌だぁ!待ってくれ!離してくれぇ!」
一人の中年の男が警官や消防士に掴まれている。
「落ち着いてください!最善は尽くしますから!」
「そう言って全然助けに行かないじゃないか!まだあの中に姪が残っているのに!」
“姪”というのは、間違いなく阿弥のことだ。
男と消防士の口論が続いている中で、友一はあることを心に決めた。
―誰も助けないなら・・・僕が助ける!・・・―